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ローラーレベラー矯正

ローラーレベラー矯正とは、千鳥状に配列されたロールに材料を通過させて繰返し曲げ変形を与える、塑性加工学の原理を応用した矯正技術です。主に鋼板の製造過程で用いられています。

ローラーレベラーの役割は次のようにまとめられます。


①降伏点を超える曲げの付与により、材料を塑性変形させて初期に保有していた曲率の影響をキャンセルする

②変形量を減少させながら繰返し曲げを付与し、残留応力を調整する

③さらに変形量を減少させながら繰返し曲げを付与し、材料の曲率を平坦にする


言い換えれば、「入口側で材料の前情報を塑性変形によりキャンセルさせて、出口側で残留応力を均一化することで平坦にする」ともいえます(図1)。

図1 ローラーレベラーの役割

当社では鋼板の矯正技術であるローラーレベラー矯正を、溶接ワイヤの製造工程に応用しています。ローラーレベラー通過時の変形量は、一般的にロールの押込み量で調整します。押込み量が大きいほど、材料に与える変形も大きくなるため、押込み量は入口側で大きく、出口側で小さく設定します。適切な押込み量は、材料の材質・形状・厚みなどによって大きく異なり、上側ロールに昇降機能を設けて押込み量を調整できるようにした装置が一般的です。

さらに、当社製品にはこれら矯正機を小型化し、溶接ロボットなどに搭載できるようにした溶接ワイヤ用矯正機があります(図2)。溶接ワイヤはパックやスプールなどの包装資材に収容する際に、一定の巻き癖・曲がり癖が生じてしまいます。そのため、ロボットや自動機による溶接施工では、溶接中にコンタクトチップから出たワイヤが瞬間的に振れ、本来の狙い位置からずれる現象「狙いずれ」が発生することがあります。この溶接ワイヤ用矯正機を使用することで、ワイヤに残存する巻き癖・曲がり癖を取り除くことができ、狙いずれの発生を防止することができます。

図2 溶接ワイヤ用矯正機AMT-KS
(株)神戸製鋼所 溶接事業部門
生産センター ものづくり開発部 生産技術室 
杉崎 健太


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