5月8日(水)京都ホテルオークラにて、神溶会全国総会が開催されました。神溶会の指定商社・地区指定商社の代表、マスコミ各社、当社溶接事業部門幹部のほか総勢約100名が参加いたしました。総会後の懇親会では、大いに旧交を温め、盛況のうちに閉会となりました。
本日はご多忙の中、『神溶会全国総会』にご参集いただき、誠にありがとうございます。
また平素より、当社溶接材料ならびに溶接ロボットシステムの拡販、神溶会の諸活動に積極的にご参画いただき、高い席からではございますが、厚く御礼申し上げます。
新型コロナによる行動制限解除から1年が経ちました。最近ではほぼコロナ前に戻ったと思うほど、あらゆる活動が目に見えて活発化しています。
アフターコロナの世界では、リモート会議・面談が普及しており、必ずしも顔を突き合わせないとコミュニケーションできない、ということではなくなりましたが、やはり対面による直接対話が一番だと思います。
それでは、神戸製鋼グループの経営状況を報告いたします。
2021年度にスタートしました前の中期経営計画は、「安定収益基盤の確立」と「カーボンニュートラルへの挑戦」の二つを掲げて前進して参りました。
収益面では、2022年度に経常利益1,000億円となり、2023年度は建築・土木分野の需要低迷やIT・半導体分野における需要の減少がありながら、需要が好調な機械においては、受注高を順調に積み上げることで、前期を上回る収益を見通すなど、着実に成果を上げることができています。
また、カーボンニュートラルへの挑戦についても、自社製鉄プロセスでのCO2削減技術の実証、MIDREXビジネスによるCO2排出削減などにより、着実に社会に貢献して参りました。
こうした状況下、2024年度より新しい中期経営計画がスタートいたします。2030年を見据えた方向性としては、カーボンニュートラルの流れをビジネスチャンスとして、確実に獲得することが重要と考えております。
弊社グループが持つ総合力を活かし、さまざまな個性を持つ人材と多様な技術や事業との『掛け算』により新たな価値を創造し、競争優位性を発揮していくことで、事業の拡大・発展はもとより、社会への貢献を果たしていきます。
このような中、溶接事業部門におきましては、「品質を経営の柱」とし、「品質・技術」「信頼・安心」「誇り・責任」を基盤に「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」であり続けることを目指しています。
また、溶接を通じ社会に広く貢献し、「いかなる事業環境においても安定した収益を確保する」事業体を目指して、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に向け挑み続けています。
次に、最近のトピックスをご紹介します。
4月末、インテックス大阪において2024国際ウエルディングショーが開催されました。前回の大阪開催は2020年の予定でしたが、新型コロナの影響により中止となったため、大阪での開催は2016年の開催以来8年振りとなりました。このような状況のためか4日間とも来場者は大変多く、各会場は大盛況となっていました。主催者の発表によれば、4日間を通じての来場者数は10万人を超えたそうで、2年前の東京開催での来場者数に迫るほどだったようです。ここにいらっしゃる皆さまも当社ブースへご来場いただき、誠にありがとうございました。
当社は、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」であり続けるという理念のもと、当社の特徴を活かした課題解決への取組みを発信しました。「最新技術の発信」と「上質なおもてなし空間の提供」をブースコンセプトとして、コロナ禍で実感した直接対話の重要性や、人と人とのつながりを大切に、溶接に関してさまざまな会話ができる空間をご用意しました。
会場での実演展示として、3D-CADと溶接ロボットの連係による自動プログラミングソフトウェア「SMART TEACHING™」と、新ワイヤ送給制御プロセス「」をご披露しました。反響も上々であり、今後の市場への展開に大いにご期待いただけたものと思います。
ここ数年続いてきました資源・資材・エネルギー価格の高騰など、外部環境は未だ絶え間なく、また激しく変化しています。当社グループとしましては、信頼される技術・製品・サービスを提供し続け、お客様とのコミュニケーションを積み重ね、神溶会の皆様と明るい未来を実現していきたいと願っています。
皆様のご期待に応えるべく、引き続き精進を重ねてまいりますので、重ねてご指導ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、今後とも変わらぬご支援を承りたく、よろしくお願い申し上げます。
最後に、各社様の益々のご繁栄と、本日ご出席の皆様方の、益々のご健勝を祈念申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。
株式会社神戸製鋼所
溶接事業部門
マーケティングセンター
国内営業部長
神溶会会長
広崎 成一
平素は神溶会活動に対し、会員の皆様から深いご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。全国の営業概況を報告させていただきます。
2021年度は新型コロナの影響から一旦回復基調を見せ、2022年度も大型再開発案件が牽引すると見ていましたが、後半から失速し始め、実績は431万㌧と対前年度を大きく割り込む結果となりました。
これは地方の中小物件において資材高騰などを背景に設計変更や延期・中止が相次いだことが要因ですが、2023年度もその影響は続き、中小物件だけではなく大型の再開発物件でも計画の見直しも散見されるようになったことから390万㌧とさらに落ち込む見通しです。これはリーマンショック直後である2009年の391万㌧以来14年ぶりとなる低水準です。
2024年度は後半より延期していた大型物件が動き始めるとの期待感がありますが、人手不足や残業規制といった影響を受け、あまりファブの稼働は上がらず410万㌧程度に留まると見ています。
造船もコロナ禍の影響で受注量実績は低迷しましたが、2021年に入って受注量が急回復、それ以降も順調に受注を積み上げており、直近3ヶ月の受注も前年比4倍の勢いでスタートしています。足元では各ヤードとも手持工事量を3年先まで確保しつつあり、工事量は潤沢と言える状況です。
一方、受注量増加に伴い、竣工量も2021年度が底と見て、2022年以降は順調に回復するものと予測していました。しかし、資機材の価格高騰や調達難、人手不足やCN対応による艤装工事期間の長期化といった要素が複合的に重なり合ったことから、2023年に入っても操業はなかなか上がりませんでした。急激な環境改善は難しく、さらに大手造船ヤードでの新造船事業撤退などもあることから、2024年度も竣工量は横ばいから微増程度で推移すると見ています。
但し、造船について中長期的には明るい予測データもあります。
世界的な人口増加に伴い、船腹需要量は今後も増加が見込まれること、2010年前後に大量に建造された船のリプレース需要が見込まれていることから、2030年頃には世界の新造船需要は1億総㌧まで増えるとの予測です。大手ヤードを中心に日本の造船ヤード数は減少し、建造能力も低下している中、どこまでシェアを獲得できるかがポイントですが、日本でも建造量が伸びていくことは確実と思われます。
自動車の国内完成車生産台数の推移となります。
自動車も新型コロナの影響から挽回生産体制への早期移行が期待されていた中、これに水を差したのが車載半導体の不足でした。2021年夏頃に表面化した半導体不足影響は長期化の様相を呈し、2023年度も完全には解消しないと見ていましたが、後半より急速に改善したことにより実績は873万台まで積み上がりました。
2024年度も堅調な国内販売とバックオーダーに支えられ、コロナ禍前に迫る900万台超えも確実視されていたのですが、23年下期より発生した認証不正問題は一部メーカにて影響を引きずることから、890万台程度に留まると見ています。
こちらはショベルの世界総需を示したものとなります。
右肩上がりに増えていた需要は2021年をピークに急減しています。これは世界の40~50%を占めていた中国が急減し、22年は27%、23年は19%まで落ちたことが大きく影響しています。国内や欧州の需要はほぼ横ばいと予測していますが、北米需要も減少基調であることから、2024年は対前年度比で微減になると見ています。
業種動向を踏まえた溶材総需の推移です。
全業種とも足元では回復基調は鮮明ではなく、人手不足や残業規制の課題も共通して顕在化していることから、コロナ前水準への需要回復には戻らずに23万㌧水準で推移する見込みです。まだ具体的な需要はこれからの部分はありますが、今後はカーボンニュートラル関連の新規需要に期待したいところです。
すでにお伝えしておりますとおり、溶接材料の価格政策としては24年6月より全品種を対象に+10%程度の値上げをお願いしております。堅調なインド需要などを背景にした鉄源市況の再上昇が大きな要因の一つとなっています。ミルメーカ各社も鉄鋼製品の値上げを打ち出していますが、23年下期後半より原料炭が再上昇、24年度以降も高値水準が続くとの予測です。鉄鉱石も高水準が続いており、溶銑コストは当面高止まりが続くと見ています。
鉄源以外にも、配合溶材に使用される各種合金・レアメタルも調達難により調達コストが上昇しています。さらにエネルギーコストの高止まり、副資材や輸送コストの上昇も拍車を掛けている状況です。特に社会問題化している物流の2024年問題については動向を注視しているところですが、ドライバー不足による輸送能力の低下に伴い、今後もさらなるコストアップが懸念されるところです。
それ以外にも人手不足や働き方改革を背景とした労務費の上昇、品質の維持・向上のための設備投資といった固定費の上昇も見込まれる中、お客様のご理解を得るべく丁寧に進めて参ります。神溶会の皆様の引き続きのご理解・ご支援をお願い申し上げます。
今回、神溶会活動として溶接サポーター活動について制度変更を4点実施します。
地区指定商社様と指定代理店様が対象となります。
溶接サポーター制度は開始から20年が経過していますが、今回の制度変更の狙いとしては、技術知識と商品知識の向上だけではなく、現場訪問の機会を増やし、技術提案を行う営業活動の原点に立ち返ることを目的としたものです。
最後にJIWSにおいて実演を行いました新開発製品についてご紹介致します。
このは慣性を利用して溶滴移行制御を行う世界初のワイヤ送給制御プロセスであり、炭酸ガスでもパルスMAG並みにスパッタやヒュームを低減することが可能です。
従い、メリットとしては混合ガスではなく炭酸ガスを使用できることで大幅にランニングコストを削減できること、アークの良好な集中性により深溶込みを得られるため亜鉛めっき鋼板などに対する気孔欠陥に強いこと、溶接速度を上げることが可能なため作業能率を大幅にアップできることが挙げられます。
ターゲットとする業種はまず混合ガスを使用している自動車や建設機械から始め、最終的には炭酸ガスでよりスパッタ減を望まれるお客様全般に展開したいと考えております。今秋から発売予定としておりますのでどうぞよろしくお願い致します。
本日の概況報告にもあったとおり、今後は人材の問題が我々を取り巻く大きなキーワードであり、多くの企業では優秀な人材をいかに確保し、育成して定着させるかが課題になるものと思われます。
視点を変えると、神戸製鋼所様でも今般溶接材料の値上げを実施されるとのことですが、まずメーカがしっかり利益を出し、賃金の上昇や新規事業への投資と通じて経済を活性化していただくことが重要であると考えています。
そしてこの循環を多くの大手下請けへの工賃上昇にも繋げていただきたいと願います。地域でお客様とお話しする機会があるのですが、原材料の上昇分の値上げは認めてもらえるものの、工賃は認めてもらえないということをよく耳に致します。地域差もあるのかもしれませんが、今後は大手企業と中小企業の給与格差はさらに大きな問題となると思われます。
いかに会社に利益を残すかが我々経営者の使命だとすると、これからはこのような格差を縮める取組みが必要なのではないでしょうか。人口減少の問題も顕在化し、国内市場も大きな拡大は期待できない中、例えば他社との取った・取られたという今までの切磋琢磨の競合関係から、今後はライバル会社と手を組み、共存共栄を図る選択肢も十分考えられます。
神溶会もサポーター制度を変革させるように、共存共栄を図るためには我々地域の商社・販売店としても自ら変革しなければならない時だと感じています。今までのようにメーカに頼り切りではこれからの変化には対応できないため、我々もスキルアップが必要であり、要所要所ではメーカのご支援を受けながら役割を全うしたいと思います。
神溶会会員の皆様が懇親を深め情報を共有し、それを地域に持ち帰って役立てることも大きな役割と考えています。神溶会を皆様の力で今後も発展させていきましょう。
最後に神溶会の益々のご発展と会員各社様のご繁栄、この場にご列席の方々のご健勝を祈念し、ご挨拶とさせていただきます。