山口県下関市は山口県西部、本州の最西端に位置し、古くは壇ノ浦の戦いや幕末の下関戦争など、日本史の節目に幾度となく登場した地でもあります。また宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘したとされる、かの有名な巌流島も下関市の観光名所の一つです。巌流島は正式には「船島」という名称ですが、敗れた佐々木小次郎を偲び、剣術の流派「厳流」からそう呼ばれるようになったと言われています。今回はそんな下関市に工場を構える株式会社瀨戸﨑鐵工所様を訪問し、濵村工場長、製造部 田丸部長、吉冨課長補佐、草場班長、村上様にお話を伺いました。
本日は大変お忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございます。また、日頃より弊社溶接材料を御愛顧いただき誠にありがとうございます。早速ですが、まず貴社の概要と強みについてお聞かせください。
当社は1937年の創立で、今年(2019年)5月に82周年を迎えました。元々は舶用エンジンの整備や、甲板機械および漁船の油圧漁労装置の製造を行っていましたが、1979年に日本プスネス株式会社と製造協定を締結し、大型・中型舶用の甲板機械も製造を始めました。1999年に日本プスネス株式会社が当社株式100%を取得し、今に至ります。主に5万重量トン以上の船舶向けに、主要製品のウインドラスやムアリングウインチなどの甲板機械を製造しています。国内の造船所に加え中国やフィリピンを中心とする海外の造船所に販売しており、現在までに約3,000隻以上の納入実績があります。
また、アフターサービスとして「訪船点検サービス」を行っています。ご要望に応じ当社の技術者がお客様を訪問し、船舶点検や聞き取り調査を行うことで、製品を安心してご使用いただくための取組みです。また、製品の消耗具合に応じ代替品のご提案や、点検内容や整備状態を記載した「点検項目」をお渡ししています。このようにお客様を全力でバックアップする体制を整え、業界では長年トップシェアを維持しています。
次に、弊社溶接材料をご愛顧いただいておりますポイントをお伺いできますでしょうか。
神戸製鋼の溶接材料全般に対して言えることですが、溶接作業性が良好な点を評価しています。特にビード外観が綺麗であるのに加え、溶接時のスパッタ量が少ない点や、ヒュームの発生量が少ない点を評価しています。また、当社は軟鋼材に加えステンレス材も使用しています。過去にさまざまなメーカーの材料をテストしましたが、スラグ量が多くスラグ巻込みなどの欠陥に繋がってしまうことがありました。一方で、神戸製鋼の[P]DW-309Lはスラグ量が適度で、また、はく離性が良く欠陥が減ったため採用に至り、現在まで使用しています。希望としては、スラグはく離性がさらに向上したワイヤが開発されれば、非常にありがたいです。
では、昨年より[F]DW-200を新たに採用いただいていますが、採用に至ったポイントについてお聞かせください。
一番の評価ポイントは1パスで大脚長が出せるようになった点です。部材にもよりますが、脚長10mm位を狙う際、以前は2 ~ 3パスでの施工を行っていましたが、[F]DW-200を使用し1パスで行えるようになりました。特に、ロボット適用箇所については1パス化により、パスごとに行っていたティーチング、スラグ除去の工程が不要になるため、効率化に繋がりました。その他高電流域であってもスラグはく離性が良好である点、またスパッタ量が少ない点についても評価でき、採用を決定しました。今後、希望としてはさらに大脚長かつ多層盛りにも適したワイヤを開発いただければと思います。
弊社カスタマーサポートサービスの対応について、どのようにご評価いただいていますでしょうか。
昨年、NKの施工承認試験を受験する際に複数回に渡りサポートしていただきましたが、非常に親身になって対応いただきました。試験の内容説明や要領書作成、実技指導など、丁寧に対応いただいた結果無事に施工承認を取得することができました。また実施工面では、以前ロボット溶接においてアンダカットが多発することがありましたが、その際にも条件調整のポイントについて指導いただき、大幅に改善することができました。
最後に、当社へのご要望と貴社の今後の取組みについてお聞かせください。
まずは、今後も引き続き技術フォローをお願いしたいと思います。加えて、溶接材料の選定手法や新製品紹介などの講習会対応もお願いできればと思います。我々としても溶接に関しての知見を高め、会社としてレベルアップに取り組んでいきたいと考えています。ご協力をお願い致します。また、今後造船の仕事量が回復傾向になると聞いています。当社の仕事量にも回復が期待されるので、溶接材料の安定供給についてもお願い致します。
今後の取組みとしましては、ベテランの従業員から若手従業員への技能伝承に力を入れていきたいと考えています。そのための取組みとして、若手に責任のある仕事を積極的に任せることを心掛けています。具体的には、不具合発生時の対応や、施工承認試験の受験などを積極的に若手に任せています。このような取組みを行ってきた結果、昨年(2018年)、ある若手社員が社外で開催された溶接コンクールで入賞しました。当社にはやる気に溢れている従業員がとても多いと自負していますので、失敗を恐れずさまざまなことにチャレンジし、多くのことを学び、仕事に活かして欲しいです。
当社取組みをご評価いただきありがとうございます。
またご多忙の中、取材にご協力いただきました濵村工場長、製造部 田丸部長、吉冨課長補佐、草場班長、村上様に心より感謝申し上げます。今後も貴社の品質向上に向けご協力させていただくとともに、益々信頼いただけるメーカーとなれるよう努力して参ります。
最後になりますが、株式会社瀨戸﨑鐵工所の皆様の益々のご活躍をお祈り致します。
※文中の商標を下記のように短縮表記しております。 FAMILIARC™→[F] PREMIARC™→[P] |