皆さんはTQM(Total Quality Management 総合的品質マネジメント)という言葉をご存じでしょうか。TQMは日本のものづくりで培われた品質管理の考え方を、企画や設計などの上流工程から販売・サービスなどの下流工程まで、企業経営すべての活動に拡大した経営管理手法です。現在では国内外の多くの企業がこの管理手法を実践しています。
では具体的にどのような手法なのでしょうか。例えば家族経営でとても流行っている町中華屋さんを想像してみてください。この町中華屋さんは個々のお客様に向き合いながら、時代時代のニーズに合わせたメニューやサービス、味付けなどを変え、お客様からの信頼を得ています。このような活動は、家族経営などの小規模な経営で行うことはさほど難しいことではありません。しかし、企業規模が大きくなればなるほどお客様の“真の声”が企業の隅々までには行き渡らず、各部署はお客様の真の声ではなく、“部署ごとの都合” で活動を行ってしまうことがよくあります。これでは企業活動の方向が定まらず効率的・効果的に活動を進めることができず、結果、競争力も下がり、持続的に成長していくことが難しくなってしまいます。この小規模な企業ならば簡単にできることを、大規模な企業でも効率的・効果的に行おうというマネジメントがTQMです。
TQMの構造は、“原則” “活動要素” “手法” の三つからなりますが、ここでは一人ひとりの行動の基本となる考え方である“原則” のみを説明します。
TQMの原則は“後工程はお客様(顧客指向)” “プロセス重視” “全員参加” の三つからなります。まず“後工程はお客様” ですが、各部署が直接お客様の真の声を聞き、その声に応えていくのは不可能です。しかし自部署の業務の成果物を引き渡す次の部署を“お客様” と想定し、その自部署のお客様の声に応えるような活動を進めることは可能です。そしてまた次の部署も、またその次の部署もという風にこの活動を繋いでいき、最後に実際に企業として製品やサービスを提供するお客様に引き渡す部署もそのお客様の“真の声” に応えていく活動を行うならば、結果的に企業としてお客様の“真の声” に応える活動になっているという考え方です。
次の“プロセス重視” ですが、結果のみではなく、その結果を生み出す手順や方法(これをプロセスと言います)を重視しようという考え方です。どのような仕事にも出来栄えがあります。この仕事の出来栄えですが、人の入れ替わりや作業方法の不統一、使用する機器などの違いなど、さまざまな要因によってばらつきます。各部署の仕事の出来栄えにばらつきが生じれば、最終的にお客様に提供される製品やサービスもばらついてしまいます。これではお客様の真の声に応えることができません。このばらつきを抑えるために、現時点でもっとも良い手順や方法を皆で共有し、そして皆で行うことができれば、最終的にお客様に提供される製品やサービスも安定し、真の声に応えることができます。またその手順や方法を、皆でさらにより良いものになるように改良・改善していけば、お客様の真の声にさらに応えることができるという考え方です。
最後が全員参加です。例えば経理や総務など、一見、企業のお客様とは直接関係なさそうな部署であろうと、自部署の業務の成果物を引き渡す部署は必ず存在します。その人たちに、精度良く、また効果的・効率的に成果物を渡すということは、他の部署と何ら変わりはありません。そのような意味で、TQMの原則に従い組織の全員でこの活動を行っていくということが大切になってきます。
2017年10月、KOBELCOグループは、品質に関わる不適切事案が多くの部門で発生していたことを公表しました。その結果、社会に多大なるご迷惑を掛け、KOBELCOグループの信頼が大きく失墜したことは記憶に新しいところです。
失われた信頼を少しでも回復するには、社会に役立つ製品や技術、サービスを継続的に提供し続けなければいけません。KOBELCOグループではお客様からの信頼を確固たるものにするために、2020年度からKOBELCO TQM活動を進めています。まだまだ道半ばであるKOBELCO TQM活動ですが、グループ全体で取り組むことによって、KOBELCOグループの企業理念である『KOBELCOが実現したい未来:安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界』の達成を目指します。