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新人営業マンのための溶接基礎講座

第7回 『建築構造用高性能590MPa(N/mm²)
鋼材(SA440)について』

第7回目は、「建築構造用高性能590MPa(N/mm²) 鋼材(SA440)」の解説をいたします。近年、首都圏などの大都市では超高層建築物の建設需要があり、耐震性も考慮した建築用高強度鋼材の適用実績が増加しています。建築構造用として主に使用されている490MPa(N/mm²)級の鋼材を使用し、超高層建築物を建設しようとすると、強度を上げるため過大な板厚となり、溶接や切断加工の負荷が大きくなります。一般的に建築用鋼材の強度区分は、引張強さ400、490、520、590MPa(N/mm²)級がありますが、1988年から5か年で「建設事業への新素材・新材料利用技術の開発」プロジェクトにおいて材料規格、利用技術が指針としてまとめられ、建築構造用高性能590MPa(N/mm²) 鋼材(SA440)が大臣認定を取得いたしました。これにより590MPa(N/mm²)クラスの高性能鋼(SA440)を使用するときは、個別に使用承認が必要であったものがその必要がなくなり、大臣認定された高性能590MPa(N/mm²) 鋼材のSA440を一般的に使用できることになりました。




SA440鋼材特性

特性として大きく3つあげられます。1つ目は「優れた塑性変形性能」で高強度でありながら降伏比は80%以下と規定されており、大地震の際には地震のエネルギーを吸収する優れた塑性変形性能があります。2つ目は、「高基準強度」で降伏点または耐力の上下限値の幅を100N/mm²としてばらつきを少なくし、降伏点または耐力および引張強さは、板厚にかかわらず一定となっており、基準強度は、F=440N/mm²(Fは溶接部の許容応力度の基準強度を表す)と一定です。3つ目は、「高靭性」でシャルピー吸収エネルギーを0℃で47Jと規定しています。

SA440はSA440BとSA440Cの2種類に区分されていますが、B、C種の使用区分はSN材に準じています(SN400Aは溶接性が保証されていないため除く)。降伏比の上限が80%と規定され、B種は塑性変形能力と溶接性を確保しており、さらにC種はB種の特性に加え、耐ラメラテア性能(板厚方向の割れなどが発生しない特徴)が追加されています。



SA440対応溶接材料

日本鉄鋼連盟(旧鋼材倶楽部)の「建築構造用高性能590MPa(N/mm²) 鋼材(SA440)設計・溶接施工指針」に溶接材料について規定されており、上記の引張強さ590MPa(N/mm²)以上、降伏耐力440MPa(N/mm²)以上の溶接金属の性能を満足する溶接材料を選定することを規定しています。但し、溶接材料の中には引張強さが590MPa(N/mm²)以上ではなく、570MPa(N/mm²)以上と規格保証値が要求性能より小さいものがありますが、引張強さが590MPa(N/mm²)以上であることを保証された溶接材料、または要求性能が満足していることが確認できる溶接材料であれば、使用できると規定されています。実際には要求性能が満足するものがほとんどです。当社のSA440鋼材対応の溶接材料としては下記になります。溶接法別に記載しておりますのでご参照ください。



SA440鋼材の溶接施工の注意点

溶接施工についても、日本鉄鋼連盟(旧鋼材倶楽部)の「建築構造用高性能590MPa(N/mm²) 鋼材(SA440)設計・溶接施工指針」に解説されています。施工のポイントは、①予熱、②溶接入熱、③パス間温度の熱処理になります。予熱に関しては、溶接時の初層での低温割れ防止のためと、溶接組立箱形断面柱(4面BOX柱)のサブマージアーク溶接での大入熱による熱影響部の圧延で引き延ばされた介在物に水素の集積を防ぎ、割れを防止する予熱があります。溶接入熱については、溶接部位、溶接法ごとに細かく最大溶接入熱が規定されています。理由として溶接入熱が高すぎると強度(TS:テンション)と衝撃値(J:シャルピー)が低下するからです。パス間温度については、溶接部位、溶接法に関係なく250℃以下を目安に規定されています。


※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
FAMILIARC™→ [F] TRUSTARC™→ [T]



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