昨今、さまざまな技術分野で「ロバスト性」という言葉をよく聞くようになりました。「ロバスト」を直訳すると堅牢や強健、頑丈に作られたなどとなります。また外乱に強い、その外乱の影響を小さくする仕組みを持つなどの意味でも用いられます。
溶接の世界でこの「ロバスト性」を例えると、「設定電流や電圧、溶接速度など、溶接条件の使用可能範囲が広く使いやすい○○」、「開先精度にバラツキがあっても欠陥のない健全な溶接ができる○○」など、外乱に強いことへの表現が分かりやすいと思います。○○には溶接材料、装置、溶接プロセスなどが当てはまります。
具体的な例を挙げましょう。当社の低スパッタ炭酸ガスアーク溶接法であるは、その名のとおりスパッタの発生が少ない溶接法ですが、実力を発揮するには溶接条件などにある程度の制限があります。この制限が使用目的に対して、狭く厳しいものであれば、「ロバスト性が低い」溶接法となりますし、逆に制限が減り、適用範囲が広がれば、「ロバスト性が向上した」と言えます。
2022年春より、新 鉄骨溶接ロボットシステムとして販売しております、低スパッタ炭酸ガスアーク溶接法は、まさにのロバスト性を向上させた溶接法です。従来のでは、鉄骨継手のレ形開先内のウィービング溶接において、開先に近づいたときにアーク長が乱れることがあり、時折大粒スパッタがダイヤフラムへ付着していました。は新開発の電流波形制御により、アーク長の乱れを抑制し、スパッタ発生を極限まで減らしています。さらに、規則的な溶滴移行をコントロールできる最大溶接電流の拡大に成功し、施工能率をアップしています。
また、の専用ワイヤ MG-56R(A)は、高能率施工に適した新ワイヤ表面処理により、送給経路による負荷を軽減し、安定したロボット溶接を実現します。このような溶接材料の性能もロバスト性と言えるでしょう。
このように、溶接における「ロバスト性」とは、溶接材料や溶接ロボットの使い勝手の良さ、溶接品質および能率の向上につながる重要な特性と言えます。今後もこの「ロバスト性」を常に意識し、より良い溶接ソリューション商品を追求してまいります。