営業部ニュース

新人営業マンのための溶接基礎講座

第3回 『す・すが入る』

「す」の解説をいたします。野菜などの場合に、大根や蕪(かぶ)の根菜に『す』ができることが多く、組織が成長しすぎると内部に空洞ができます。また豆腐を煮立ちし過ぎたり、茶碗蒸しやプリンなどを蒸しすぎると『す』が入ります。食品内部の水分が沸騰し、水蒸気が外に抜けだせないために気泡となり、内部に空間ができることが原因です。また内部ではなく表面に気泡ができ、穴や溝になることも『す』と呼びます。溶接でも同様に溶接した際に、シールドガスが十分に供給されていない、風の影響を受ける、ノズルと母材間距離がある、母材の汚れ、シールドガスが不純、ワイヤに水分や錆が付着、溶接条件が適正でないなど、さまざまな要因でガスが内部に閉じ込められて、生じる空間ができることを『す』と呼びます。『す』ができた製品は強度が落ちるなど、不良になるのは溶接でも同じです。JISの溶接用語では、ピットは溶接ビードの表面に生じた小さなくぼみ穴、ブローホールは溶着金属中に生じる球状または、ほぼ球状の空洞と説明されています。また、ブローホールが細長く成長して連続でつながった『いも虫状』、『ミミズ状』のような細長い形状の気孔をウォームホールと言い、特にビード表面中央に発生したものを『ガス溝』と呼んでいます。『す』は漢字では『鬆』と書きますが、読めない人も多いので「す」と書く人が多いです。

【発生原因】大きくは下記の2つです。

「す・すが入る」を防止する溶接材料

① 被覆アーク溶接棒

ZERODE-44

JIS Z 3211 E4303/AWS A5.1 E6013 相当


ライムチタニア系(ライム:石灰とチタン:酸化チタン)を主原料として、高酸化チタン系と低水素系の特性を持ち合わし、再ア-ク性、ビ-ドの伸び、スラグはく離性、被覆の可とう性(曲げて使用)も良好な上、難吸湿タイプで特に立向および上向姿勢での作業がやりやすく、平らな波目の細かいビ-ドが容易に得られます。
※亜鉛めっき鋼板にも対応できるオールマイティな被覆アーク溶接棒

Z-1Z

JIS Z 3211 E4340


亜鉛めっき鋼板に対し優れた耐気孔性を持ち、アークの吹きつけが強く、集中性が良好なため、ピット・ブローホールが少なく抑えられます。またアーク安定性は極めて高く、亜鉛めっき特有の亜鉛蒸気爆発も最小限に抑えられ、低スパッタも実現でき、亜鉛目付量の多い鋼板(推奨目付量≦550g/m2)でも、亜鉛を除去することなく、滑らかな良好な溶接ビードが得られます。

② ソリッドワイヤ

SE-1Z

JIS Z 3312 G 49 A 0 C 12


亜鉛めっき鋼板(推奨目付量:~100g/m2)用の炭酸ガスシールドアーク溶接ソリッドワイヤです。SEワイヤシリーズの亜鉛めっき鋼板用で優れた耐気孔性をもち、ピット・ブローホールを少なく抑えることができます。当社独自技術の高性能銅めっきなしワイヤによるアークの安定効果により、スパッタ発生量が少なく、耐溶落ち性にも優れています。またノーめっきワイヤのため、送給経路への銅めっき粉の堆積によるワイヤ送給トラブルがなくなり送給性も向上します。

③ フラックス入りワイヤ

MX-Z200/ MX-200

JIS Z3313 T49J0T1-0CA-U


神戸製鋼所のすみ肉溶接用フラックス入りワイヤと言えば、 MX-Z200です。最大の特長は耐ピット性で、一般的なフラックス入りワイヤの中ではもっとも耐気孔性(耐ピット、耐ガス溝)に優れ、プライマ(一次防錆塗料)が塗布された鋼板の溶接などに効果を発揮します。

MX-Z200MP


特性は MX-Z200と同等ですが、 MX-Z200MPは多層盛の水平すみ肉溶接用に改良されたフラックス入りワイヤで、 MX-Z200MPと比較しスラグの密着性を向上させています。多層盛の積層途中でスラグがはく離しないため重ねたビードの揃いが良く、仕上げ後にスラグを1度に除去することができ、ビード表面にスパッタが付着していない美麗なビード外観が得られます。

MX-100Z


亜鉛めっき鋼板(推奨目付量:目付量が40~90g/m2程度)用のフラックス入りワイヤになります。耐気孔性が良好で、スパッタ発生量も少ないワイヤで、200A以下の低電流域で良好なアーク安定性を実現します。

MX-1Z


亜鉛めっき鋼板(推奨目付量:~150g/m2)用のフラックス入りワイヤになり、200Aを超える中電流域で良好なアーク安定性を有します。

DW-1SZ


目付量が多い(150g/m2以上)鋼材には、 DW-1SZが適しており、耐気孔性に優れ、スパッタも小粒でアークも非常に安定し、全姿勢溶接が可能です。但し使用上の注意点としては、電源極性は直流正極性(ワイヤマイナス)であることで、一部ワイヤマイナスでは使用できない溶接機もあるので確認が必要です。

※優れる性能を持つ MX-Z200でも絶対にピットが発生しないわけではなく、母材表面状態(油・水分など)や溶接条件(電流・電圧・溶接速度など)次第ではピットが発生することもあります。

溶接レスキュー隊119番にも動画が紹介されています。下記URLからご覧ください。
https://www.boudayori-gijutsugaido.com/magazine/vol495/rescue.html



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