知恵袋コーナー

AI(人工知能)・機械学習

AI(Artificial Intelligence:人工知能)の定義はさまざまですが、端的に表現するなら、人の思考を模倣したコンピュータ(機械)です。人の思考を模倣というと、SFに出てくるような人のように会話・思考するものを思い浮かべがちですが、今日私たちの周りにあるのは、特定の作業ができるように訓練されたAIがほとんどです。ここでは、AIの一技術領域である、機械学習について説明します(図1)。



図1 AI・機械学習・ディープラーニングの関係



機械学習には、①教師あり学習、②教師なし学習、③強化学習の3つの手法があります。これは学習方法で分けた分類です。一方、学習に使うデータによる分類もあります。例えば、(a)数値(b)画像(c)自然言語(d)時系列などです。これらの組合せもあります。



①教師あり学習

教師あり学習は、一番わかりやすいかもしれません。教師というのは、答えを教えるもの、という意味です。問題と答えがペアになったデータをAIに与えると、AIが学習し、似た問題が解けるようになります。例えば、製造条件や天候などが変化したときの製品歩留まりを予測したり、検査画像をもとに合否判定や不合格品の分類ができます。



②教師なし学習

教師なし学習は、答えのないデータを扱います。正解を求めるものではない、と考えてもらえたらと思います。例えば、工場のセンサーデータから通常と異なる状態を検知したり、①の前処理として質を維持しつつ学習しやすい形にデータを変換したりできます。



③強化学習

強化学習は、①や②と異なり、動的な環境から学習します。犬のしつけをイメージしてください。AIが選択した結果に対して報酬/罰則を与えることを繰り返し、AIが試行錯誤して学んでいく手法です。例えば、自動運転や碁を打つAIなどに、こちらの技術が使われています。



溶接の分野では、裏波溶接の自動化のように複雑かつ迅速な状況認識/判断が必要な領域でAIの検討が始まっています。こちらは機械学習の一種であるディープラーニングが使われています。また、AIとシミュレーションを組合せ、溶接継手特性の予測や溶接材料設計への活用も進んでいます。例えば、溶接施工条件と溶接材料の設計から溶接金属の強度特性を予測したり、安定した溶接品質が得られる溶接材料設計を探索したりするのに、AIを活用する試みがあります。



現状のAIは、あくまで人から提示された範囲のことしか考慮しません。AIとうまく付き合うのに大事なのは、AIができること/できないことを理解し、できる部分をAIに任せて、できない部分を人がフォローしてあげることです。これは人にも当てはまりますね。職場にAIがきたら、新人のように見守ってあげ、フォローしてあげましょう。



最後に、AIの出来具合は学習するデータの質と量に強く依存します。将来に備えて、データを残し、いつでも使える状態に整理しておくとよいです。一度きり、自分しか使わないからと自分のパソコンに眠らせてしまっているデータも、将来あなたの優秀なパートナーとなるAIを育て上げる、宝のドリルとなるかもしれません。



(株)神戸製鋼所 溶接事業部門
技術センター 溶接開発部 
横田 大和


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