掛川は、江戸から東海道二十六番目の宿場町。また、掛川六万石の城下町でした。その掛川の北西部にあるのどかな田園地帯原里(ハラサト)に、花菖蒲園で知られる庄屋屋敷・加茂荘があります。桃山時代から代々続いた加茂家は、天正十七(1589)年当時に浜松城主であった徳川家康の書状をはじめ、江戸時代の文書を多数有する旧家です。現在の建物の大部分は安永二(1773)年の建築で、240年以上を経た貴重なものです。白壁が続く庄屋屋敷の門前に咲き広がる花菖蒲は、梅雨の時期に咲く花のため農作物の目安にもなるといわれており、古くから厄除けとして育てられてきました。花菖蒲園では明治初期より伝わる古花から、新たな収集、品種改良が重ねられたものまで、約1haの園場に約500種50万本あまりが保存・栽培されています。