新銘柄のおはなし 番外編


ぼうだより 技術がいどVol.479からVol.489にて連載しておりました「新 銘柄のおはなし」が神溶会BEYOND GENERATIONSキャンペーンに伴い『番外編』として復活。

キャンペーン共通重点商品について、銘柄の由来と特長をお話し致します。


1.ソフトアーク低水素系溶接棒/乾燥省略可能包装 FAMILIARC™ LB-50FT

神戸製鋼の軟鋼・高張力鋼用低水素系溶接棒は全て“LB-XX” という銘柄にしており、LBと言えば低水素系溶接棒の代名詞になっています。LBの“L” は「LowHydrogen(低水素)」の頭文字を取ったもので、“B” は[F]B-17に始まる軟鋼・高張力鋼用溶接棒に付けられた神鋼溶接棒共通の記号です。50(㎏f/mm2)はおおよその溶着金属の強度レベルを示します。[F]LB-50FTの特長の一つは、乾燥省略が可能なアルミ包装品をメニューに持つことです。通常、低水素系の溶接棒は、使用前に300~350℃で30~60分の乾燥が推奨されますが、[F]LB-50FTのアルミ包装品は、開封後8時間までは、乾燥せずにそのまま使用することができます。

神戸製鋼の低水素系溶接棒として最も使用されているのは[F]LB-52ですが、[F]LB-50FTは[F]LB-52と同一のJIS Z 3211 E4916 U です。この2銘柄の違いは、アークの感触です。[F]LB-52はアークの感触が比較的ハードですが、[F]LB-50FTはソフトなアークを持ち味としました。銘柄名にもこの特長を持たせ、LB-50FT→LB-SOFT( ソフト)と“SOFT” を隠し文字にしております。[F]LB-50FTは乾燥が省略できるソフトアークな低水素系溶接棒、と覚えて頂ければ幸いです。

LB-SOFT

2.ワイヤ送給性改良半自動用ソリッドワイヤ New FAMILIARC™ MG-56

MGの由来は「新 銘柄のおはなし-9」(ぼうだより 技術がいどVol.487)でもお話したとおり、“M” はMETALの頭文字、“G” はGASから取ったものです。56は溶着金属の引張強度(56㎏f/mm2、550MPa)を示します。JIS YGW18のソリッドワイヤとしては、[F]MG-55、[F]MG-56がありましたが、New [F]MG-56は、ワイヤ送給性を更に改良し、トーチ振動による疲労を軽減させました。また、アークの集中性・安定性に優れ、スパッタ発生量が減少します。今までのワイヤとの送給性やアーク安定性の違いを感じてください。

3.黒皮鋼板向け すみ肉用フラックス入りワイヤ FAMILIARC™ MX-Z50F

フラックス入りワイヤは「複合ワイヤ」とも呼ばれ、充填するフラックスのタイプにより「スラグ系(多量のスラグ形成剤を含む)」と「メタル系(鉄粉が主体)」に分けられます。新商品である [F]MX-Z50Fは、メタル系に属する黒皮鋼板向けのすみ肉用フラックス入りワイヤです。MXの“M” はMETAL(メタル)からとったものですが、“X” は呼び方の響き、語感が良いこと、Excellentなワイヤというイメージが込められています。“Z” は、ZシリーズとしてZERO(ゼロ)=低スパッタ・低ヒュームを示し、50は溶着金属のおおよその強度レベル、Fは「Fillet:下向・水平すみ肉専用ワイヤ」であることと共に、「Flat:ビード形状がフラット」であることも示しています。

建築鉄骨業種等で使用される黒皮鋼板の「黒皮」とは、製造過程で鋼材の表面に形成される酸化被膜、いわゆる黒錆のことで、ミルスケールとも呼びます。黒皮鋼板は、基本はブラストや研削・研磨などで表面処理されて用いられますが、表面処理前に溶接される場合もあり、良好なビード外観、耐気孔性が求められます。また、黒皮鋼板は溶接後にめっき、塗装を施すことも多く、「滑らかなビード形状」が重要になります。[F]MX-Z50Fは、このようなニーズに着目して開発された「滑らかなビード形状」を実現するフラックス入りワイヤです。是非、お試しください。

スラグ系FCW FAMILIARC™ MX-Z50F
MX-Z50FのFは、フラットなすみ肉溶接の“F”。滑らかなビード形状だから、後めっきが楽だね!

※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
FAMILIARC™→[F]


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