広島県広島市の中心部、JR広島駅から電車で約30分。 東広島市の西条町は、昔から兵庫の灘五郷、京都伏見と並ぶ銘醸地として知られる地です。JR西条駅の周辺では、賀茂鶴、亀齢、西條鶴など、名だたる酒蔵が、昔ながらの醸造を続けています。最近では外国人観光客も多く訪れるようになっており、酒蔵を結ぶ「酒蔵通り」と呼ばれる通り一体は、平和記念公園、安芸の宮島に次ぐ、県内屈指の人気スポットだそうです。酒蔵の中には、土・日・祝日に一般開放し、見学や試飲ができるところもあり、酒造りの工程を学びながら、蔵の個性を生かした自慢の酒を試飲できるところも魅力の一つだとか。
さて、今回は、その西条町に工場を構える、豊国工業株式会社を訪問し、鉄構本部本社工場の倉本工場長、製缶センターの内藏田チームリーダー、河本様、田口様、柏井様にお話を伺いました。
本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂戴し、また日頃より弊社の溶接材料をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。はじめに、御社の沿革・事業内容をお聞かせ下さい。
当社は昭和32年10月、広島市大州町に創業し、水門の製作販売を開始しました。33年4月ラック式ピンジャッキ開閉機を開発し商品化、生産と販売を開始し、39年9月には橋梁分野に進出。昭和44年2月に、広島県東広島市の県工業団地の敷地18,000坪に西条工場を完成させ、現在に至るまで操業を続けております。製作品目は、水門設備をはじめ、放流管、放流バルブ(ジェットフローゲート他)、機械台、鋼製ベッド、ベルトコンベア、除塵機、ウインチ、減速機、螺旋階段、サイロ、タンク等々です。いずれも豊富な実績を有しており、1ブロック最大40トンまでの製作と、工場内外での仮組立が可能です。数々の水門工事で培ってきた一歩先行く技術で、設計から製作、据付、メンテナンスまで一貫した管理体制のもと、お客様のニーズに沿った製品を提案・提供しております。
北海道から九州まで、全国の様々な地域での実績がおありですね。今後の事業環境の見通しについてもお聞かせいただけますか?
近年、全国各地で大規模災害が増加傾向にあり、公共設備の更新や整備などの重要性が見直され、加えて更なる防災・減災対策が要求されています。高度成長期以降に整備された施設においても、これから先の20年間で、「建設後50年以上」を迎える割合が加速度的に高くなる見込みです。当社にとって関わりの深いダムについても、近年頻発する渇水や洪水が、住民におよぼすリスクを早期に軽減するため、既設ダムを運用しながら有効活用する方策を、「ダム再生ビジョン」として国土交通省が発表しています。今後も、河川用ゲート、津波対策用ゲート、ダムゲートなどは、老朽化対策やインフラ整備、既存ダムの有効活用等の観点から、需要はさらに拡大するものと見込まれ、現状維持以上の市場があるものと考えています。
昨年には、二相ステンレス鋼用の溶接材料 [P]DW-329AP、[P]DW-2209など、特長ある製品もご使用いただきました。どの様な用途でお使いいただいているのでしょうか? また、それらも含め、当社材の評価をお聞かせください。
二相ステンレス鋼は、高強度で耐食性にも優れるため、使用することで構造物全体の軽量化に繋がります。近年水門の案件等で需要が顕著に増えてきており、当社でも新たに採用するケースが出ています。初施工の際、比較のために複数社の溶接材料を試してみましたが、他社材ではX線透過検査でブローホールが多く見られるケースがありました。また、若干ですがスラグはく離性において、神鋼材の評価が良かったことも採用に至った一因です。軟鋼用含め、神戸さんにお世話になっていますから、その安心感もありますね。評価についてですが、二相ステンレス鋼用の溶接材料は全般的にスラグはく離性に劣り、立向上進溶接の作業性が良くない印象です。同じくステンレス鋼用の[P]DW-308LPのように、全姿勢で使いやすい溶接材料を、新たに開発してもらえたら助かります。
貴重なご意見をありがとうございます。溶接材料の品質と作業性は、切り離せないものと思いますので、今後の改良や新たな商品開発に繋げて参ります。工場内を拝見しますと、若手の作業員の方が多く見受けられるように思います。以前、神鋼溶接サービスによる技能講習会も開催させて頂きましたが、社内の技能継承にはどのように取り組まれていらっしゃいますか?
当社の製缶工場で溶接に携わるメンバー構成は、30代・40代が数名、一番多いのは20代の従業員です。若手の視野が狭まらないように、JIS検定や溶接競技会など、社外の方に評価いただけるような場に、積極的に参加するようにしています。神鋼溶接サービスさんにも、溶接指導でお世話になっていますが、外部の方から細かく技術指導いただけるのには、本当に助かります。また、数年前から場内に溶接練習場も確保しました。甲斐あってか、先輩が若い人の練習を見ながらアドバイスをする風景が、自然と見られるようになっています。今後も職場に風土として根付くよう、継続していければと考えています。
おわりに
お忙しい中、長時間にわたって取材にご対応頂きました、倉本工場長、内藏田チームリーダー、河本様、田口様、柏井様には心より御礼申し上げます。多様化・複雑化する社会状況と市場ニーズに対応するため、柔軟に変革と挑戦を重ねて来られた豊国工業の皆様の姿勢に、大変感銘を受けました。今後とも、溶接全般に関して相談でき、ともに成長できるパートナーとなるべく、努力して参ります。
最後になりますが、豊国工業株式会社の皆様の、益々のご発展とご活躍をお祈り申し上げます。
※文中の商標を下記のように短縮表記しております。 PREMIARC™→[P] |