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溶接材料の必要量・コスト計算をする場合、溶接金属と溶接材料の重量を求める必要があります。溶接金属の重量は、体積に鋼の比重=7.8を掛けると求められます。
例えば、求めた溶接金属の重量が100kgとします。この溶着金属量を溶着効率(溶接材料の何%が溶接金属となるか)で割りかえすと必要な溶接材料が算出できます。溶接材料毎の溶着効率は右表をご参照ください。溶着金属とならない分は、スラグ・スパッタなどとなります。
被覆棒は約180kg(100kg÷0.55)、ソリッドワイヤで約105kg(100kg÷0.95)が必要となります。
「割れ」はもっとも恐ろしい欠陥です。割れの先鋭部は極めて鋭く、応力が集中しやすい状態にあり、そこを起点として構造物が破壊することがあるからです。溶接部に割れが見つかったら、その部分は完全に除去し補修することが必要です。
補修にあたっては、割れの原因についても明らかにし、その対策をたてることが重要です。
引張試験機で試験片にゆっくり荷重を加えていくと、右図のような曲線となります。このY点を「降伏点」と呼びます。また、鋼種によってはY点が明確に出ないものがあります。この場合、0.2% 伸びとの交点(Y1点)を「0.2%耐力」と呼び、降伏点と同様に扱います。降伏点以下の荷重であれば、荷重を外すと元の試験片の形状に戻ります(弾性変形)。一方、降伏点を超える荷重では、荷重を外しても元に戻りません(塑性変形)。
このように降伏点(0.2%耐力)は引張強さと共に重要な性能の一つです。
そのため、構造物の設計は、引張強さよりも降伏点(0.2%耐力)を用いることが多いようです。
溶接材料の選定条件は、まず溶接金属の強度が母材以上あることです。例えばSM400(JIS G3160)という鋼材の引張強度は400MPa以上なので、溶接材料の強度も400MPa以上なければなりません。
しかし、溶接継手ではもう一つ「ねばさ=衝撃性能/吸収エネルギー」という大事な性能があります。鋼は温度が低くなると、「ねばさ」がなくなります。(昔のCMで、ばらの花を凍らせるとちょっとの力で粉々になる、というものがありました。)寒冷地向けの構造物や低温環境下で使用する機器などは、低温でも大丈夫な材料を使わなければなりません。
突合せ溶接には、「完全溶込み」と「部分溶込み」があります。板厚すべてを完全に溶接するものと、板厚の一部のみを溶接するものです。基本は完全溶込み溶接です。
完全溶込みを得るには、開先を取らないI形開先では難しく、V形開先やX開先のような開先を取る継手とする必要があります。開先が必要な最低板厚は溶接法によって異なりますが、4~5mmくらいと考えられます。
溶接線が比較的短い溶接を連続で行うと、継手部全体の温度が極端に上昇します。その結果、冷却速度が遅くなり、溶接金属が所定の強度を得られない場合があります。
この現象は、鉄骨の溶接などで時々見られる問題です。対策としては、パス間温度管理の徹底や、強度の高い溶接材料の適用などがあります。
溶接において、予熱やパス間温度などの熱管理は、溶接金属の性能に大きく影響するため非常に重要です。影響される性質としては、「強さ(引張強度・降伏点)」「ねばさ(吸収エネルギー)」、耐割れ性、溶込み、アンダカットなどです。
一般に温度測定には温度チョークや表面温度計が良く使われています。開先近辺を正しく測定しましょう。