静岡県浜松市。静岡県の西部に位置し、県内では人口第一位の市。かつて徳川家康が天下取りの足掛かりとした場所として知られています。近年はオートバイや楽器をはじめ、様々な工業施設が集積する国内屈指の工業都市として発展を遂げています。
今回は、浜松市に工場を構えるHグレードファブリケーターである株式会社渥美鐵工所殿を訪問し、渥美社長様、渥美常務様、村上様にお話を伺いました。
本日はご多忙にも関わらず、お時間を頂きありがとうございます。また、日頃より神戸製鋼の溶接材料並びに溶接システムをご愛顧頂き誠にありがとうございます。早速ですが御社の概要と仕事状況をお聞かせください。
当社は1909年に浜松市で創業しました。当時は火の見櫓(やぐら)の製作や、金属加工業などに従事していたという記録が残っています。その後、大阪万博のパビリオン「虹の塔(専売公社館)」の鉄骨加工に従事したことをきっかけに、この分野に力を入れるようになりました。1979年にはHグレードを取得して、工場規模を拡大し、現在の体制となりました。現在は鉄骨加工を主軸とし、機械器具の設計製作や部品の精密加工など鉄加工のプロ集団として広い分野に携わっております。
御社は神戸製鋼の溶接ロボットを計4式導入頂いておりますが、当社の溶接ロボットを採用頂いたきっかけ及び導入効果をお聞かせください。
<導入のきっかけ>
本格的にロボットを導入し始めたのは3年前になります。当時は溶接工程において量的にも質的にも弱いと認識しており、溶接工程の増強を課題として捉えていました。そこで、溶接工程の自動化に目を向け柱大組立溶接ロボットシステムの導入を決断しました。1号機の導入後は3カ月間ほど導入効果を検証した結果、生産量増加に寄与することが実証されたため、ただちにコア連結溶接ロボットや天吊マルチワーク溶接ロボットを導入しました。さらに2016年7月には既設システムの適用ワーク拡大を目的とし、既設柱大組立溶接ロボットへ梁溶接ソフトを導入しました。
<導入の効果>
ロボット導入により前後工程の役割がはっきりするようになったため、生産工程がスムースになりました。その効果もあって、導入前と比較すると鉄骨加工量は2割ほど増加しています。また、加工能力が高く、工程の短縮化が図れたことは大きなメリットになっています。その他、以前は苦手だった大型サイズの仕事なども安定して製作できるようになり、仕事を選り好みしなくて良くなりました。
当社ロボットの総合評価をお聞かせください。
導入直後はロボットについての知識や経験が不足していたためか、エラーや溶接欠陥が発生するケースが散見されました。しかし、コベルコロボットサービスのアドバイスを参考に、消耗品の交換を中心とした定期的なメンテナンスを実施することで、エラーや欠陥は減少しました。今ではUT検査の合格率は99%以上と非常に高く、大変満足しています。その他、連続稼働性の高さやREGARC™ システムによる低スパッタ溶接など使い勝手が良く、鉄骨加工に必要不可欠な設備だと感じています。
当社へのご意見、ご要望などお聞かせください。
<ロボットについて>
溶接品質安定のために消耗品交換やメンテナンスが重要だということは理解しています。ただし、消耗品の部品点数が多く、部品費用の割高感は否めません。また、メンテナンスの間はロボットが使用できず、どうしても生産性が落ちてしまいます。今後は消耗品の交換タイミングを少しでも遅く出来るように、耐久性を向上させた部品の開発をお願いします。
また、現在の溶接ロボットのラインナップはカスタマイズ性が高くなく、ユーザー側の選択肢が少ないと感じています。どのファブリケーターも同じような設備構成になっており、他ファブとの差別化が図れません。将来的にはラインナップを拡充させ、ユーザーの特性に合わせたシステムの提案を期待しています。
<溶接材料、溶接ソリューション活動について>
半自動用ワイヤとしてFAMILIARC™ MG-50を使用していますが、ロボット用のFAMILIARC™ MG-50Rと比べ、アークの安定性、スラグ剥離性があまり良くありません。これらを改良した半自動ワイヤ(FAMILIARC™ MG-50の改良版)の開発に取り組んでいただければありがたいです。
また、当社では人材育成にも力を注いでおり、その一環として溶接工のレベルアップを計画しております。溶接技能講習を定期的に実施するなどサポートいただくようお願いします。
貴重なご意見ありがとうございました。溶接ソリューション企業として溶接材料並びに溶接システムともに益々信頼頂けるメーカーとなれるよう努力して参りますので、今後ともよろしくお願い致します。
ご多忙の中、取材に応じて頂きました渥美社長様、渥美常務様、村上様に心より御礼申し上げます。最後になりますが、株式会社渥美鐵工所の皆様のご発展とご多幸をお祈り申し上げます。