産業用ロボットは車両や一般の機械設備と同様長期間稼働することにより各構成部品が経年劣化し当初の機能が維持できなくなったり故障に繋がります。このようなトラブルを未然に防止し安定稼働のために定期的に消耗部品の交換や予防メンテナンスが必要です。具体的には人間の健康診断に相当する定期的な点検を実施することが重要です。
一方、労働安全衛生法第28条第1項の規定に基づく産業用ロボットの使用等の安全基準に関する技術上の指針として、事業者は産業用ロボットについて定期検査等を行うことと示されています。ここでは作業開始前点検および定期検査と行うことにより異常を認めた時は直ちに補修等の処置を講ずることや定期検査や補修等の内容を記録し3年以上保管することも示されています。
このように産業用ロボットを長期間かつ安全に使用するためには定期的な点検が重要であり、これには日常点検と一定期間毎に行う定期点検の2通りがありますが、総じて定期点検と称していることが多いです。お客様が独自に実施する日常点検の場合もあれば専門のメンテナンス会社に外注する年次点検等の場合もあります。後者には年間契約と随時契約の2通りがあり、システム構成や仕様によって契約内容・点検項目が多種多様です。
年間契約の一例として「鉄骨ロボットシステム年間保守点検契約」について以下に紹介します。専門の技術スタッフが定期的に(通常は年2回すなわち半年毎)訪問し、ロボットシステムが正常な機能を満たしているかの診断・微調整の実施や整備工事のご提案を行うだけでなく各種技術相談にも対応しています。1システム当たり約半日の作業を基本としています。トーチ周り・送給装置周り等溶接に深くかかわる部位のチェックや送給部品の交換からはじまり、バッテリ交換、周辺機器の診断・清掃・調整・消耗部品の交換までが主な作業内容です。通常の年次点検や5年点検とは異なりますが、継続的にお客様のロボットシステムの状況を把握して的確なアドバイスも行いますのでトラブルをできる限り未然に防ぐことに繋がり、コストパフォーマンスに優れたものとして最近急速に普及しています。
参考文献:
社)日本溶接協会編 ロボットアーク溶接技術入門 産報出版(株)