営業部ニュース

溶接ご法度集-25 各種母材におけるご法度(2)
ステンレス鋼編 その1


今回よりステンレス鋼の溶接およびステンレス鋼との異材溶接のご法度を取り上げます。

ステンレス鋼は「stain-less」=「さびが-少ない」の名前のとおり、さびにくく耐食性がよい母材です。さびにくくするため、Cr を10.5%以上含んでいます。

ステンレス鋼は一般的な炭素鋼と物理的性質が異なる点が多く、その性質をよく知ったうえで溶接することが重要です。

※本文中の溶接110番・119番および用語解説バックナンバーは、以下URLよりお入りください。
ぼうだより 技術がいどライブラリー https://www.boudayori-gijutsugaido.com/library/


ご法度(114)
ステンレス鋼を一種類しかないと思うのはご法度!

ステンレス鋼と聞くと、SUS304やSUS316など、オーステナイト系ステンレスが頭に浮かぶ方が多い思います。

実際にはステンレス鋼には大きく分けて4種類があります。大別すると、主成分としてCrのみを含有するもの・CrとNiを含有しているものがあります。同じように耐食性のよいステンレス鋼でありながら、その性質は全く異なるので注意が必要です。



ご法度(115)
オーステナイト系ステンレス鋼を予熱して溶接するのはご法度!

予熱とは、前号で説明したとおり、割れ防止のため溶接前にあらかじめ母材を温めることです。

予熱は中高炭素鋼や厚板など、割れが発生しやすい母材で広く用いられていますが、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接ではむしろ予熱しない方が良いといわれています。予熱すると溶接部の耐食性が悪くなるため、注意が必要です。


ご法度(116)
オーステナイト系ステンレス鋼の溶接で「ひずみ」を軽視するのはご法度!

図 ひずみ防止のための溶接手順および溶接法

ご法度(114)の表で分かるように、オーステナイト系ステンレス鋼の熱膨張係数は、炭素鋼と比べるとかなり大きいことが分かります。このため、溶接熱が加わると溶接部近辺が膨張し、大きく変形することが推測されます。

したがって、溶接に際しては逆ひずみを取る、治具などで抑える、溶接後にひずみを取るなどの対策が採られています。

ご法度(117)
炭素鋼用被覆アーク棒と同じ溶接電流を用いるのはご法度!

ご法度(114)の表で分かるように、ステンレス鋼は種類に関わらず電気抵抗が大きいのが特徴です。

そのため、炭素鋼用溶接棒と同じ溶接電流を使用すると、電熱器のニクロム線のように溶接中被覆アーク棒全体が赤くなってしまいます。(「棒焼け」とも呼ばれます)こうなると、フラックス(被覆剤)が役目を果たせなくなり、欠陥が多発する危険性があります。


[P]NC-38と[F]ZERODE-44の適正溶接電流範囲

棒径 [P]NC-38 [F]ZERODE-44
2.6mm 75~95A 60~100A
3.2mm 85~120A 100~140A
4.0mm 110~160A 140~180A

*下向・水平姿勢

*ステンレス鋼用被覆アーク棒の電流範囲は神鋼溶接総合カタログ P256でご確認ください。

コベルコ溶接テクノ(株) CS 推進部・営業部
https://www.kobelco-kwts.co.jp/
原田 和幸
※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
FAMILIARC™→ [F] PREMIARC™→ [P]

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