知恵袋コーナー

裏当て材・表当て材

溶接用の副資材として使用される裏当て材・表当て材は、鉄骨仕口の裏当て金などの金属系と片面溶接における裏ビード形成を目的とした非金属系に分類されます。今回は後者の非金属系について記載します。

裏当て材を使用する片面溶接は、突合せ溶接における裏はつり工程を省略でき、能率向上につながることから、造船所を中心に広く適用されています。裏当て材の構成や取扱方法はさまざまであり、表1、表2に示すように、適用する溶接法や溶接材料、部材の状況などにより、適したものを選定する必要があります。

横向溶接最終層の垂れ防止を目的とし、表当て材も使用されています。表当て材の使用方法とビード形状の一例を図1に示します。横向溶接の最終層は1パス目のビード形状が重要です。表当て材を用いることにより、2パス目以降の積み上げがしやすい良好なビード形状が容易に得られ、その後の積層も容易になります。

裏当て材を使用する片面溶接における留意事項を以下にまとめます。


表1 溶接法と対応する裏当て材

溶接法 裏当て材
サブマージアーク溶接 FAMILIARC™ FA-B1
ガスシールドアーク溶接 FAMILIARC™ FB-B3
FAMILIARC™ FR-B3
エレクトロガスアーク溶接 FAMILIARC™ KL-4


表2 ガスシールドアーク溶接用裏当て材の種類と特長

品 名 使用特性 組合せ溶接材料
耐目違い
曲がり部
への適用
切断の
容易さ
取付けの
簡便さ
ソリッドワイヤおよび
フラックス入りワイヤ
(MXシリーズ)
フラックス入りワイヤ
(DWシリーズ)
FAMILIARC™
FB-B3
Tサイズ
Aサイズ
FAMILIARC™
FR-B3

◎:非常に優れている ○:優れている □:普通 △:やや劣る ×:劣る

図1 表当て材の使用方法およびビード形状一例
図1 表当て材の使用方法およびビード形状一例
図2 裏当て材外観一例
図2 裏当て材外観一例


(1)開先形状

開先角度やルートギャップが狭すぎると、裏ビードが出にくくなります。溶接電流を上げる、アークを突っ込ませるなど、無理に裏ビードを出そうとすると、高温割れや融合不良のリスクが高まります。ルートフェイスがある場合も同様です。反対にルートギャップが広すぎると、裏当て材を多く融かしてしまい、裏ビードが過大となります。

(2)溶接条件

溶接電流が過大であったり、溶接速度が速すぎたりすると、高温割れが発生することがあります。

(3)鋼板表面状態、裏当て材の取扱い

開先内に錆や水分、油などがあるとブローホール、ピット、ポックマークなどの欠陥が発生することがあります。裏当て材についても、雨に濡れたものや結露したものを使用すると、同様の欠陥が発生する可能性があるため、保管方法には留意する必要があります。また、溶接中の剥落や裏ビード形状の不良を防ぐため、裏当て材取付け部は錆、油などを除去し、裏当て材のセンターをルート中央に合わせる必要があります。極厚板のエレクトロガスアーク溶接など、大入熱で使用する場合は、当て金とくさびなどによるバックアップが推奨されます。

(株)神戸製鋼所 溶接事業部門 
技術センター 溶接開発部 
榊山 一規


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