※本文中の溶接110番・119番および用語解説バックナンバーは、以下URLよりお入りください。
ぼうだより・技術がいどライブラリー http://www.boudayori-gijutsugaido.com/library/
入熱の計算式は、
入熱量(J/cm)=溶接電流(A)×アーク電圧(V)×60/溶接速度(cm/min)
となります。
この式からは、高い溶接電流でゆっくり溶接すると入熱量は大きくなります。つまり、一度に大きなビードを着けると入熱量が上がります。
一般的には、入熱量は適正な範囲で小さいほど良好な機械性能を得ることができます。一方、大入熱で溶接すると溶接金属は引張強度、吸収エネルギー共に低下し、また過大な入熱で溶接すると熱影響部が組織粗大化して衝撃値が悪くなることもあります。
同じ開先を溶接する場合、大入熱で溶接すればパス数は少なくなり、小入熱の場合はパス数が多くなります。
溶接継手各部にはそれぞれ名称があります。
溶接金属は、溶接材料と母材が溶け混ざり合って凝固した部分です。
ボンド(融合部)は溶接金属と熱影響部の境界線のことです。
熱影響部は、溶けてはいないものの溶接熱で組織が大きく変化した部分です。ハズ(HAZ=Heat Affected Zone)とも呼ばれます。性能も、もとの母材とは異なります。それぞれの名称を、よく覚えておきましょう。
*なお、神鋼総合カタログにある「溶融金属」は溶接材料が溶けて凝固したもので、母材などの影響を受けていない金属を指します。
溶接姿勢には大きく分けて「下向」「立向」「横向」「上向」の4つがあります。
これらの中でもっともラクに溶接でき、しかも良好な結果を得られるのは下向姿勢です。
溶接欠陥を避け、能率を上げるためにも無理にむずかしい姿勢で溶接をせず、治具などを用いてできるだけ下向で溶接することをお勧めします。
ビードの継ぎ目部は、外観的に不連続部をつくりやすく、なおかつ欠陥も発生しやすくなります。ビード継ぎを上手に行うには、後戻り(スタート運棒)法による欠陥の防止と、前ビードのクレータ高さを考慮したビード高さのコントロールが重要です。
練習によってそのコツを体得することが重要です。
表側の溶接が終わり裏側の溶接を始める前に、裏側の開先を取り直す作業を行います。これを「ガウジング」と呼びます。アークエアを用いることが多いようです。
ガウジングは開先を取り直すと同時に、表側ビードの1層目を取り去ることも目的です。
表側ビードの1層目は、どうしても欠陥が出やすいので、それを除去する必要があります。
ビードを何本も置いて溶接する多層溶接では、ビードの盛り方(盛る順序)を考えて溶接しましょう。どこに、どんな大きさのビードを置けば、次のビードを欠陥なく置きやすいかを考えながら溶接することが大切です。
融合不良などの欠陥は、電流が低いなど溶接条件だけではなく、盛り方が悪いことも原因として考えられます。