ビジネスマンの読書は、趣味の読書とは違う。「必要に駆られて」「時間のない中で」読むことも多いだろう。そうやって貴重な時間を割いて読んだのに、人間は、読んだ本の内容を読後1か月の間に8割以上も忘れてしまうという。
言ってみれば、ビジネスマンの読書は「仕事のための手段のひとつ」に過ぎない。それならば、もっと有意義で、効率的な読み方はないものだろうか。
私たちに必要なのは「読書に関する考え方の転換」と「読み方/アウトプットのテクニック」。そこで今回は、あなたの読書時間をもっと刺激的で楽しいものにしてくれる、読書のための「読書」をご提案したい。
筆者は、電通から外資系コンサルティング・グループに転職する際、経営学を独学するために1000冊以上の本を読破したという読書経歴の持ち主。本書では、そんな筆者自身の体験を交えながら、本の選び方、読み方の具体的なテクニック、アウトプットの方法など読書にまつわるすべてのノウハウが「仕事につなげる」という目的に特化して紹介されている。
筆者が述べる「仕事につなげる読書」の6つの大原則とは、次のようなものである。
•原則1 成果を出すには「2種類の読書」が必要
•原則2 本は「2割だけ」読めばいい
•原則3 読書は「株式投資」と考える
•原則4「 忘れる」ことを前提に読む
•原則5 5冊読むより「1冊を5回」読む
•原則6 読書の「アイドルタイム」を極小化せよ
「読書はそれなりにしているのに、読書で得られた知識や感性を、うまく仕事に生かせていない」。そんな人にこそ読んでほしい、「仕事につなげる」読書術。
話題のビジネス書を広く浅く「読んだ」ことに満足してしまって、それだけで仕事ができる人になれたような錯覚に陥っているのではないか……。ドキッとする指摘だが、どなたにでも多少の心当たりがあるのでは。
本書には、随所に上のような筆者の体験談が差し挟まれている。わかる、わかると思わず頷いてしまうようなエピソードも、ちょっと心が痛むような失敗談もある。何のことはない、超優秀な外資系コンサルタントだって、私たちと似たようなことで悩み、失敗して、その体験からノウハウを構築しているものなのだ。
親しみやすく軽妙な語り口調でさらっと読みこなせてしまう本書だが、その内容はどれも、ビジネスマンの読書に対して、今までになかった有用なアイデアを与えてくれる。
たとえば、「せっかく時間を割いて/苦労して読んだものをすぐに忘れてしまう」という問題について。これを解決するためには、「忘れてもよい仕組み」をつくるしかないと筆者はいう。
皆さんに提案したいのが、イケスを作ってそこで情報という魚を飼うという作戦です。
具体的には、本を読んで重要だと思われた箇所をデジタルデータとして転記し、いつでも検索して確認できるようにしておくのです。(P142より)
重要な本は線を引きながら3度読む。本の内容を転記し、仕事や実生活に対する「示唆」と「仮説」を書きだしておく。WEB上のサービスやスマホアプリ(筆者の場合は「Evernote(エバーノート)」)を使って、自分の“外側”に検索可能な知的ストックを作る。……この一連の流れを、筆者は「イケスに魚を飼う」と表現しているのである。
Evernoteを使ったイケスは、紙とボールペンで書き付けた読書ノートとは違って検索性が高く、仕事の場面でとても有用なアイデアだ。しかも、イケスに放り込んでおいた情報は、5年後、10年後にも変わらぬ姿で引き出して役立てることができる。
本書には、「イケス」の他にも、読書に関する数多くの貴重なノウハウが惜しげもなく記述されている。「自分の読書を変えてみたい」、そんな時には必携の一冊だ。
確実な成果に結びつけるための、本書の読書メソッド。読書を通じて“自分をプロデュース” し、「こんな仕事がしたい」「こういう人材でありたい」と願う場所に近づけるとしたら、こんなに夢のある話はない。
忙しくて、読書を十分にする時間はない――。そんな悩みを持つ現代人のために、よりスピーディに大量の本を読みこなし、良質の知識を頭に蓄える技術としての「速読術」を提供してくれる一冊。
加えて本書では、専門書を読む場合、試験対策、資格取得、英文書籍や資料、新聞や雑誌、インターネットやメールなど目的別に速読術を使いこなすコツも紹介されている。
王様の速読術は、従来型「速読術」のように、目を速く動かしたり、特殊な技能を駆使したりする必要はない。第一段階(プレビュー)、第二段階(写真読み)、第三段階(スキミング)の三段階をマスターして、「一冊の本を30分で読む」ことを実現する手法である。これらの技術を駆使して何冊も読むうちに、良質な知識が頭に留まるようになり、認知力も鍛えられ、自然と短時間でもより深く読むことができるようになるだろう。
何度でも読み返したくなるような一冊に出会うためには、その前の段階として「たくさんの本に広く浅く接する」ことがどうしても必要になる。だが、忙しくてたくさん読むための時間がない! そんな現代人に向かって本書の「王様」が語りかける言葉は、実にユニークだ。
「ワシはワシの時間で動く。ワシもみんなと同じだけの時間しか与えられておらぬ。時間は誰にでも平等なのでな。だから、ワシは家来の時間には合わせない。ワシの時間に家来が合わせる。一時間取れれば一時間、30分なら30分、10分なら10分で必要な情報をワシに提供するのが、家来の勤めなのじゃ」(P23より)
本は、優秀な家来。そして私たちは、本という家来を多く抱える「王様」なのだ。
積みあがっていく未読本の山のプレッシャーに、私たちのほうが振り回されることはない。家来の時間に付き合うのは、もうやめにしよう。
「王様の速読術」の最大の特徴であり魅力でもあるのは、「一冊の本と付き合う時間を30分と決めてしまう」ことである。この時間設定も絶妙で、どんなに忙しくとも、30分くらいならば負担になり過ぎることなく捻出できるのではないだろうか。
30分間で一冊を読み切るにあたっては、本の情報の8割を得るために、「2割だけを読む」という発想がベースになる。たとえば、学生時代の試験勉強を思い返してみて欲しい。テストで100点を取ることは、もちろん素晴らしい。だが、大抵の人は、当時「この科目は80点でいい。なるべく効率的に勉強して、さっさと他の教科に移ろう」と学生なりに戦略を立てたのではなかっただろうか。なにしろ、勉強しなければならない科目はいくつもあった。その点は、今現在の私たちだって、似たようなものだ。読みたい本、読まねばならない本はたくさんある。一冊だけに時間を割いてはいられない。
2割を効率的に読んで、8割の情報を会得する。それが、現実と上手く折り合いをつけるために最善の方法だということは、経験上も、多くの方が共感できるところだろう。
「王様の速読術」は、単に本を早く読むだけの技術ではない。読書に対する考え方を、より効率的で有意義な方向に転換してくれるものだ。
さあ、本書を開いて、賢くて頼りになる王様に会いに行ってみよう。
必要なのは、知識の量ではなく、「現実の世界」と「教養の世界」をどうつなげるか。バラバラの雑学や豆知識を増やすことではなく、知識をもとに一貫したモノの見方を身につけることが教養の柱となる――。TVなどでもお馴染みの齋藤孝氏による文系・理系の垣根を越えた「全方位読書案内」317冊。
本書は、「歴史観」「思想観」「日本文化観」「仕事観」「科学観」という5つの分野において、はじめて読むひとのための入門書から教養を深めるステップアップ書まで、良書をピックアップしてくれる読書リスト。“大人の教養”が、タイトル通り全方位に網羅されていて、このリストが手元にあれば、しばらくは読む本に困ることもないだろう。
こうしたリストを手掛かりに、まずは自分の興味の範囲を探ってみるのも面白い。気持ちのおもむくままに、広がる本の世界を旅しよう。