5月9日(火)京都ホテルオークラにて、神溶会全国総会が開催されました。神溶会の指定商社・地区指定商社の代表、マスコミ各社、当社溶接事業部門幹部のほか総勢約100名が参加いたしました。総会後の懇親会では、大いに旧交を温め、盛況のうちに閉会となりました。
本日はご多忙の中、『神溶会全国総会』にご参集いただき、誠にありがとうございます。
また平素より、当社溶接材料ならびに溶接ロボットシステムの拡販、神溶会の諸活動に積極的にご参画いただいていること、さらには、昨年度の神溶会70周年記念全国総会へのご参加、また、2度にわたる値上げへのご理解・ご協力を頂戴し、高い席からではございますが、重ねて厚く御礼申し上げます。
本日の神溶会全国総会は、2019年以来4年振りの開催となります。3年半の長きにわたり私たちを苦しめてきたコロナウイルス感染症ですが、昨日から5類へ移行され、いよいよコロナ前の日常を取り戻すために本格的に動けるようになりました。
一方で、この3年半の間、日常にもいろいろな変化がありました。行動制限に対応するためリモートでの会議や面談など、必ずしも顔を突き合わせないとできない、ということではなくなりました。
しかしながら、やはり人と人とが腹を割って想いを分かち合うには、対面が一番だと思います。
それでは、当社グループの経営状況を報告します。2022年度の業績見通しについて、自動車向け需要の回復遅れなどによる素材系事業を中心とした販売数量の減少や東南アジアの需要減を中心とした建設機械の販売台数の減少などにより、売上高は2兆4,900億円の見通しです。また、鉄鋼メタルスプレッドの改善、電力における燃料費調整の時期ずれ影響の縮小や建設機械におけるエンジン認証問題に関する補償金収入などにより、経常利益は920億円の見通しです。
今年度(2023年度)は、当社が掲げている2021 ~ 2023年度中期経営計画の最終年度にあたります。
今中期計画で掲げている、安定収益基盤の確立とカーボンニュートラルへの挑戦に向けた取組みを進め、中期計画でのKPIである、投下資本利益率(ROIC)の5%以上の収益レベルを確保するべく活動していきます。これらの取組みのうち、いくつかトピックスをご紹介します。
まず電力事業です。今年2月に、高効率な超々臨界圧発電方式の神戸発電所4号機の営業運転を開始し、計画したすべての発電所が稼働しました。(神戸発電所1号機~ 4号機、真岡発電所1号機~2号機 計6基)
ちなみに、火力発電の規模だけで申し上げますと、電力会社に匹敵するぐらいの能力を持っています。また、さらなる高効率化・低炭素化に取り組むことで、社会や地球環境に貢献してまいります。
次にDXへの取組みです。コベルコ建機では、昨年12月“K-DIVE” のサービス提供を開始しました。これは、建設機械の遠隔操作システムであり、建設現場のテレワークをコンセプトとしています。
建設機械の遠隔操作とマッチングサービスを融合させることで、特定の人・場所・時間などの制約を受けずに、建設現場での施工が可能となり、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保が可能になる未来の実現を目指しています。
このほか、天然ガスを活用した直接還元製鉄法であるMIDREX製鉄プロセスによるCO2排出削減への貢献など、カーボンニュートラルにも取り組んでいます。
また資源・資材・エネルギー価格の高騰など、外部環境は絶え間なく、また激しく変化しています。当社グループとしましては、信頼される技術・製品・サービスを提供し、お客様とのコミュニケーションを積み重ね、神溶会の皆様と明るい未来を実現していきたいと願っています。
皆様のご期待に応えるべく、引き続き精進を重ねてまいりますので、重ねてご指導 ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、今後とも変わらぬご支援を承りたく、よろしくお願い申し上げます。
最後に、各社様の益々のご繁栄と、本日ご出席の皆様方の、益々のご健勝を祈念申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。
神溶会会長
株式会社神戸製鋼所
溶接事業部門
マーケティングセンター
国内営業部長
広崎 成一
平素は神溶会活動に対し、会員の皆様から深いご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。全国の営業概況を報告させていただきます。
図1-1は全国の鉄骨需要量推移です。青の棒グラフが年間、折れ線グラフは3 ヶ月ごとの需要量を示しています。
2020年度は新型コロナの影響により、現場閉所やテレワーク化による図面の承認遅れなどで混乱したことから、経済活動自体が大きく落ち込みましたが、2021年度は堅調が続いていた首都圏の大型再開発案件をベースに物流倉庫案件や半導体工場といった案件が増えたことにより、466万㌧と回復基調が鮮明となりました。
2022年度も大型再開発案件は潤沢であり、夏以降で本格稼働が見込まれるとして加工量は上向きに推移すると見ていましたが、後半の失速が響き実績は432万㌧と対前年度を大きく割り込む結果となりました。後半は大型再開発案件の端境期に入ったこともありながら、中小物件の設計変更や延期・中止の影響が想定以上に影響したと見ています。
図1-2は全国の2023年度の予想となります。大型再開発案件の計画は潤沢にあり、2025年頃までピーク感が続くという予測も出ていることから460万㌧程度を見込んでいます。ただし、懸念材料としては中小物件の延期・中止の影響も続くとしてファブの稼働は二極化傾向が進むこと、建築鉄骨も現場溶接を始めとする人手不足の影響が深刻化していることから、加工量が伸び悩む可能性は拭えないところです。
図1-3は棒グラフが国内新造船受注量、折れ線グラフが竣工量の推移を示したものです。
造船もコロナ禍の影響で、新造船商談の停滞や海運市況悪化により2020年の受注量実績は低迷しましたが、2021年に入って受注量が急回復、2022年も順調に受注を積み上げたことから、手持工事量は安全水準の2年を大きく超えるレベルまで回復しました。
受注量増加に伴い、竣工量も2021年度が底とみて、2022年以降は順調に回復するものと予測していました。しかし、国内では受注低迷に伴う造船ヤードの撤退による建造能力の低下に加え、資機材の価格高騰や調達難、人手不足といった要素が複合的に重なり合ったことから操業はなかなか上がらず、2022年は2021年を下回る結果となりました。
図1-4は国内鋼材加工量の予測となります。まず、手持工事量が一定水準を確保していることもあり、資機材価格や世界経済の動向の見極めのため、受注は選別局面となり年間建造量程度の受注に収まるものと見ています。
竣工量については、造船ヤードの撤退に伴う建造能力の低下により、機器メーカでも生産能力の減少傾向が見られることから操業水準は低迷の状況が続いています。業界最大の課題は人手不足であり、外注業者を含めて一度コロナ禍で離れた労働力はなかなか戻って来ていないのが実状です。それに加えて働き方改革に伴って労働時間の確保も困難になりつつあることから、2023年の竣工量も2022年度横ばいで推移するものと予測しています。
図1-5は自動車の国内完成車生産台数の推移となります。自動車も新型コロナウイルスの影響や、それに伴うサプライチェーン混乱を受けて生産台数は大きく落ち込みました。国内のバックオーダー自体は抱えていたことから挽回生産体制に早期移行すると見ていましたが、ボトルネックとなったのは車載半導体の不足でした。2021年の夏頃に表面化した半導体不足影響は長期化の様相を呈したことから、2022年度の完成車生産台数の実績は810万台に留まる結果となりました。
図1-6は2023年度の当社予測となります。代替半導体への切り替えなど不足解消の動きは着実に見られるものの、半導体メーカの投資意欲は薄く、2023年度中に完全に解消するのは難しいと見ています。世界的な景気減退も影響して輸出向けの需要も弱含みであり、輸出するための自動車運搬船が世界的に不足しているという新たなボトルネックも聞こえ始めてきています。2023年度の完成車生産台数は860万台程度と予測しており、コロナ禍前の2019年度水準に戻るにはまだ時間が掛かりそうです。
図1-7は国内建機の主要ユーザの生産台数を弊社で積み上げたものです。新型コロナ後は好調な需要環境を背景に生産計画は高水準を維持している状況です。ただし、建機メーカも半導体不足影響を受けたことに加え、エンジン供給の問題もボトルネックとなっており、生産量は当初想定程には上がっていません。一方、好調であったマイニング向けの需要も世界的な経済減退により、減産に転じると予測するメーカもあることから、生産量は2022年度並みに落ち着くと見ています。
図1-8は各業種別に2021年度を100として景況感指数の推移を示したものです。総じて各業種とも需要環境は悪くないのですが、部品や人手の慢性的不足といった阻害要因により上昇の力強さには欠けているという状況です。
図1-9、1-10は業種動向を踏まえた国内における半期ごとの溶接材料需要量推移です。
新型コロナ感染症の影響により需要は減退し、2020年上期を底に回復基調へと反転しました。2022年度も当初は回復局面が続く予想だったのですが、再び停滞局面となったことから、227千㌧と前年割れを見込んでいます。今後の世界経済の回復に期待したいところですが、人手不足といった要因は根本的な解消には至らず、2023年度も229千㌧と前年度微増程度と予測しています。
神溶会は創設70周年を迎え、昨年5月に70周年記念全国総会を開催して以降、「神溶会サポートプレミアム強化活動」として各地区において神溶会活動の再始動を計画しています。
活動の主旨と狙いについては、①神溶会の理念でありながらコロナ禍にて活動が停滞した「人材育成」の活動を強化すること、②直接の接触を制約したコミュニケーションから面着への「密」なコミュニケーションを重視した企画とすること、③「溶接サポーター活動」を軸に活動を強化すること、といった点を重視したイベントを企画しています。(図2-1)
図2-2、2-3、2-4は各地区活動のイベント名のご紹介となります。すでに活動開始している地区もありますが、各地区とも神溶会人材育成の核となる「溶接サポーター制度」の活動を軸に、講習会やユーザ巡回企画など、地区のニーズに合致した活動を展開する予定ですので今後の展開にご期待ください。
神溶会活動の現場活動の強化をバックアップするツールの一つとしてキャラバンカーの「溶太郎」をリニューアルしています。ラッピングを刷新し、コベルコ神戸スティーラーズともコラボを行っています。2023年度4月より現場投入していますので、今後は各地区の展示会やユーザ巡回にて積極的に活用いただきたいと思います。(図2-5)
さらに神鋼ファンの拡充のための支援策としてノベルティも積極投入します。目玉の一つとしてパック製品を模したポテトチップスを新規製作し、2023年4月より順次配布を開始しています。お客様とのコミュニケーションツールとして活用いただき、神鋼ファンの母数拡大に繋げていただくことを期待しております。(図2-6)
図3-1は主要業種を取り巻く環境とニーズを示したものとなります。各業種共通のニーズもありますが、溶接に関連するものづくりへの特徴的なニーズをご紹介します。例えば建築鉄骨は構造物の大型化・高層化・人手不足を背景に、現場溶接を始めとする作業負荷の軽減と能率化のニーズが求められています。造船・化工機はカーボンニュートラルとして持続可能なエネルギーへの転換が模索されていますが、革新的な技術開発とものづくり力も求められる中、溶接でも新たな施工技術への期待が高まってきています。自動車は耐錆性能など耐久性を目的に電着塗装性の向上などの項目がニーズとして求められている状況です。
ものづくりのニーズに対応する製品や取組みについてご紹介致します。(図3-2)
建築鉄骨業界の「人手不足・生産性向上」という課題に対し、神戸製鋼では を搭載した新鉄骨溶接ロボットシステムで、溶接の自動化、高能率化提案を進めます。
従来のよりもさらなる効率化を実現した新商品であり、新型溶接機の新たな出力波形制御によって、電流範囲を拡大とともにスパッタの発生量を低減しています。
また、表面処理技術により送給経路の詰まりを軽減した専用ソリッドワイヤとなる MG-56R(A)を使用することでワイヤ送給性や生産性を向上させています。は昨年4月から販売を開始し、高い能率と品質を評価されシステム受注を重ねており、専用ワイヤの販売も順調に増加しています。
小型可搬型溶接ロボットとしてご好評いただいている 石松™ についても、 プロセスを搭載し、ティーチングボックスから約5kgのケーブルをなくしたケーブルレス 石松™ として自動化ソリューションの拡充を図っています。(図3-3)
石松™ の良好なハンドリング性に加えて、有線の従来型よりもワーク間の移動が楽になるため、オペレータの作業効率に寄与しています。
全自動溶接機能とプロセスの低スパッタ・高能率溶接による生産性向上も実現している点を評価いただいており、2022年度の受注は前年比3割増となり順調に販売を増やしております。
主要業種の環境変化でご説明したとおり、溶接もその時代によって求められるニーズは変遷しています。神戸製鋼としてはそのニーズに適合したお客様に選ばれ続ける製品や施工の技術開発を続けて参りますが、商品力だけでは市場にはなかなか認識してもらえず、浸透もしないのも事実であります。神溶会の皆様がお客様に提案することで初めて商品価値が認知されるものであり、神溶会会員各社の活動がなくてはものづくり現場の進歩・発展も望めないといっても過言ではありません。
神戸製鋼としてはスピード感をもって商品開発を進めていくだけではなく、溶接業界を担う神溶会の人材育成も進め、ものづくり現場への貢献へのサイクルを強化して参りますので、引き続きのご協力をよろしくお願い致します。
弊社は、本年1月に創業60周年を迎えました。これもひとえに仕入れ先の皆様そして神戸製鋼所様にご支援いただいた賜物だと存じます。
さて、昨年5月に神戸の地で神溶会70周年記念総会が行われ、今年もここ京都の地で全国総会を開催することができ、ようやくコロナが終息に向かっていくのではないかと思われます。停滞していた営業活動から本来の提案型営業に戻さなければいけません。そのためには、神戸製鋼所様のご協力が必要と感じております。会社の状況を見ても、売上は上がっているにもかかわらず、出荷量は微減になっています。お客様は、仕事はあるが慢性的な人手不足があり、原材料の高騰も相まってなんとなく製造業全般に活気がないと感じています。我々の業界は、製造業と一心同体であり、今、流行のIT業界などとは違う業界ですので、省人化や効率化といったお客様のニーズや困りごとの早期解決に向けて取り組んでいきたいと思っています。
さて弊社のある岐阜の地を見てみますと、昨年11月に岐阜信長まつりでは、岐阜市の人口(約41万人)の2倍以上となる100万人に近い方が応募され、当日は岐阜市の人口より多い約46万人の方々が来訪され、大フィーバーとなりました。また岐阜県は、飛騨高山や白川郷、日本3名泉の一つである下呂温泉(あと有馬温泉、草津温泉)、斎藤道三の岐阜城、関ヶ原合戦場跡といった観光地があります。
このような地域で60年仕事をさせていただき、これから80年、100年と続く企業を目指して頑張っていきたいと思います。引き続き、仕入れ先の皆様、神溶会の皆様にはご指導、ご協力お願い申し上げます。
現場密着営業の一環で2002年からキャラバンカー「溶太郎」で各地区の国内販売組織「神溶会」の販売店やユーザ、展示会を数多く訪問し、溶接技術の指導や製品PRなどを、その場で実演できるアイテムとして活躍してきました。その「溶太郎」もかれこれ約20年経過し、今回初めてリニューアルを行いました。リニューアルを機に初のコベルコ神戸スティーラーズとのコラボが実現しました。初出陣に相応しく、4月に創立100周年を記念して展示会を開催された、名古屋の江場酸素工業さんを訪問致しました。リニューアルしたキャラバンカー(溶太郎)は、装いも新たに全国各地で開催される展示会や講習会での実演を交えた製品PRに活躍していきます。