とくに現地溶接では、母材を傾けて溶接することがあります。その際、母材傾斜は溶接が上りになるか下りになるかで、結果が全く異なります。
下りではビードが凹気味になり、上りでは凸気味になります。いずれにせよ、母材傾斜は必要最小限にする必要があります。
サブマージアーク溶接用フラックスには、大きく分けて「溶融フラックス」と「ボンドフラックス」の2種類があります。その使い分けが重要です。
溶融フラックスが原料をいったん溶かして粉砕するのに対し、ボンドフラックスは原料を焼き固めて造粒し製造します。溶融フラックスは小・中電流域で、ボンドフラックスは中・高電流域で使用されます。それぞれの特徴を活かした使い方が必要です。
また、溶融フラックスはほとんど吸湿しないのに対し、ボンドフラックスは吸湿するため注意が必要です。ただし、溶融フラックスも表面に水分が着くこともあるため、使用前の乾燥が必要です。(ご法度107をご覧ください)
神戸製鋼所では、溶融フラックスには、G-××もしくはMF-××、ボンドフラックスはPF-××という名前がついています。
ビード周辺の残ったフラックスは、溶接終了後に回収して再び使用します。
ただし、回収したフラックスはスケールやほこりなどを巻き込み、粒度分布も変化しています。この回収フラックスだけを使用すると、ビード外観、ビード形状が変わることがあります。
回収フラックスは、新しいフラックスを補充しながら使用しましょう。
吸湿したフラックスは、乾燥させてから使用しなければなりません。
乾燥させる基準は、溶融フラックスは150℃~350℃で1時間、ボンドフラックスは200 ~ 300℃で1時間です。
吸湿したままのフラックスを使用すると、ビード外観の悪化、気孔の発生、溶接金属中の水素量の増加などが起こります。
*神戸製鋼のサブマージアーク用フラックスの乾燥温度および乾燥時間は、神鋼溶接総合カタログ2020 P546にてご確認ください。
*FCB™/RF™で使用する裏当てフラックスFAMILIARC™ PF-I50R, RF-1は乾燥できません。ご注意ください。
※溶接110番・119番および用語解説バックナンバーは、以下URLよりお入りください。
ぼうだより 技術がいどライブラリー https://www.boudayori-gijutsugaido.com/library/
各種溶接材料編は今回で完結となります。
次回からは、各種材料(母材)の溶接でのご法度を紹介いたします。