新 銘柄のおはなし


>> P.16

TRUSTARCTMMG-S1CMなど数銘柄が開発されていました。現在MG-S、MG-Tが付く銘柄は数多くあり、ワイヤの種類によって使用するガスが異なってきますので、カタログなどで良く確認してください。3.MIX-XXMIXはミックスと呼びます。シールドガスに炭酸ガスとアルゴンガスを混合、ミックスして用いることがこの銘柄の由来です。代表的銘柄はFAMILIARCTMMIX-50、FAMILIARCTMMIX-50Sです。50SのSはSpray(スプレー)の頭文字をとっています。一方、FAMILIARCTMMIX-50は低電流域用のワイヤとして開発されています。スパッタが少ない混合ガス溶接は炭酸ガスに比べスパッタ量が少なく、またアークが広がるため幅広なビードとなります。そのため、スパッタを特に嫌い、継手の疲労強度の点から応力集中の少ない幅広なビード形状を望む自動車業界で多く使われています。亜鉛めっき鋼板で耐ピットに優れスパッタ発生量が少ないFAMILIARCTMMIX-1TS、薄板すみ肉溶接で平坦で広がりのある美麗なビードが得られ、高速溶接を可能にしたFAMILIARCTMMIX-50FSなどが自動車業界向けに開発されています。4.SE-XX、SE-AXX前掲のMG、MIXワイヤは銅めっきが施されています。このSEワイヤシリーズは銅めっきなしのワイヤです。SEはSmooth&Ecology(スムース&エコロジー)の頭文字を取ったものです。スムースは「銅めっき粉が発生せず、すぐれたワイヤ送給性と低スパッタを実現するワイヤ」、エコロジー「製造過程で様々な物質を使用する銅めっき工程がなく、かつ溶接中に発生する溶接ヒュームに銅めっきに由来する銅成分が含有されないため職場環境にも優しいワイヤ」の意味です(写真1、図3)。銅めっきを施すのはコンタクトチップとワイヤ間の通電性を高め、アークの安定性を向上させるためです。神戸製鋼は90年代よりロボット化が進む中で、スラグ量を少なくし連続溶接性を高めるワイヤがお客さんより求められるようになりました。FAMILIARCTMMG-50RのRは“Robot”(ロボット)の頭文字であり、スラグ量が少なくロボット溶接に適したワイヤであることを示しています。また、2010年に炭酸ガス溶接でも劇的にスパッタ量が少ないREGARCTMプロセスが開発されました。FAMILIARCTMMG-50R(N)はREGARCTMプロセスとの組合せで、その最大の特長であるアーク安定性と低スパッタを実現するソリッドワイヤです。さて、地震国日本では鉄骨構造物の耐震性確保のため、様々なルールが設定され改正が続いています。溶接材料も例外ではなく、1995年の阪神・淡路大震災を契機に1999年にJISZ3312「軟鋼及び高張力鋼マグ溶接ソリッドワイヤ」が改訂されました。同改正で、既存の軟鋼及び490MPa級高張力鋼用ワイヤについては適用鋼種に応じて入熱やパス間温度の範囲を設定し、またその範囲を超える大入熱及び高パス間温度で使用可能なワイヤとして引張強さ540MPa(55kgf/mm2)級高張力鋼用のワイヤYGW18・YGW19を新たに設定、追加しています。この時に誕生した溶接ワイヤがFAMILIARCTMMG-55、FAMILIARCTMMG-55Rです。更に2009年に改訂が行われ、引張強度、シャルピー衝撃性能が見直されました。引張強度は10MPa引き上げられ550MPa(56kgf/mm2)以上、シャルピー衝撃性能は70J以上が必要となります。これに対応した溶接ワイヤがFAMILIARCTMMG-56、FAMILIARCTMMG-56Rです。またREGARCTMプロセス用にFAMILIARCTMMG-56R(N)もラインナップされています。改正前のYGW18・19では520MPa級以下の鋼板が適用範囲でしたが、改正後は高性能鋼板550MPa級(耐力385MPa級)にも適用可能となりました。なお、MG-XXの数字部分は引張強度をkgf/mm2単位で表記しています。2.MG-SXX、MG-TXX先に述べましたように、ガスシールドアーク溶接においてはシールドガスとして炭酸ガス、アルゴンを主体とした混合ガスを使用します。神戸製鋼の銘柄では炭酸ガス単独で使用するものはMGとなっていますが、アルゴンを主体とした混合ガスを使用するワイヤにはMG-SやMG-Tを用いています。先にグロビュール移行と短絡移行のお話をしましたが、もう一つ、スプレー移行というものがあります。比較的大電流で溶接しますと、非常に小さな溶滴になって移行します。これをスプレー移行と呼んでいます(図2)。MG-SのSはスプレー(Spray)移行から取ったもので、MG-TのTは短絡移行の意味です。実はMG-SやMG-Tといった銘柄はMGより歴史は古く、昭和40年にはCr-Mo鋼用として新銘柄のおはなし-9▼▼▼ソリッドワイヤ212015Summer●営業部ニュース


<< | < | > | >>