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新銘柄のおはなし被覆アーク溶接棒(5)今回は、火力/原子力発電や舶用のボイラ、あるいは石油精製/化学プラントなどで使用される耐熱鋼用被覆アーク溶接棒についてお話しします。当社の耐熱鋼用溶接材料の商標は“”です。TRUST(信頼)とARC(アーク)を繋いだこの商標は、高い信頼が要求される溶接材料であることを示しています。ら被覆アーク溶接棒のAWS規格における分類番号に由来しております。最初の1文字ないしは2文字は溶着金属の最小引張強さを、次の数字は被覆の種類を示します。例えば、CM-A76(AWSA5.5E7016-A1)の7はAWS規格に規定される最小引張強さ70ksiの7を示し、6は被覆の種類である16:低水素系を示しています。13.CM-AXXX、CM-BXXX耐熱鋼は低合金鋼からステンレス鋼まで各種の鋼種があり、使用条件に応じて使い分けられています。代表的なものには、合金元素として1~12%程度のクロム(Cr)や最大1%程度のモリブデン(Mo)を含有する、いわゆる低合金耐熱鋼があります。耐熱鋼に要求される特性としては、①高温で機械的性質(クリープ特性)が良好なこと。②高温で化学的性質(耐酸化性、耐食性)が安定なこと。③高温で組織が安定なこと。などがあります。低合金耐熱鋼用溶接材料も、これらの要求特性に応えられるようにデザインされております。低合金耐熱鋼や同溶接材料の主要成分であるクロムは、高温強度を高めるとともに耐酸化性を向上させる働きがあります。さらにモリブデンはクリープ特性を向上させる働きがあります。CM-AXXX、CM-BXXXは当社の低合金耐熱鋼用被覆アーク溶接棒の品名で、CMはそれぞれクロム(Chromium)とモリブデン(Molybdenum)の頭文字CM-A96、を示します。次にくるAやBは心線の種類を示しており、Aは合金心線、Bは軟鋼心線を意味します。本系統の被覆アーク溶接棒としては、昭和27年(1952年)にCM-B96、83、86、93の4銘柄が初めて開発されました。当時、ボイラに使用される低合金耐熱鋼は1%Cr-0.5%Mo鋼が主流であり、2.25%Cr-1%Mo鋼はこれから、という状況にあったようです。翌年には2.25%Cr-1%Mo鋼用のCM-A106が、そしてその後今日まで様々な銘柄が開発・実用化されてきました。XXXの数字は、これCM-A106HやCM-A106Nの末尾のHやNはそれぞれ溶着金属の機械性質の特長を示しています。前者のHは、クロムやモリブデン以外にも合金成分を添加して高温強度やクリープ特性を改善していること、すなわち高強度(HighStrength)のHを示します。後者のNは、焼き戻し脆化特性などを従来よりも大幅に改善した新しいタイプ(Newtype)という意味で、Nを付しています。14.CM-XXX、CR-XXXクロム添加量が3%を超える当社の低合金耐熱鋼用被覆アーク溶接棒は、軟鋼芯線ではなく全て合金芯線を使用しております。このため品名で芯線の区別を設ける必要がないことから、CMやCRの後ろにAやBのないCM-XXX、CR-XXXという呼称を用いています。CMとCRの違いは、前項の範囲(2.25%Cr-1%Mo鋼以下)とは溶接材料の規格区分が異なっていたことや、対応する鋼材のASTM規格や市場での認知度などが影響したものです。末尾の数字-5、-7、-9はそれぞれクロム含有量の代表値を示しています。現在ではタングステンを含有し、高温・高圧ボイラの過熱器管、ヘッダ等の溶接に使用されるCM-2CW、9%Cr-1%MoにNb、Vを添加しさらにクリープ特性に優れるASTMA213Gr.T92、T122鋼材(12%Cr含有)用の材料としてCR-12Sなどがラインナップされています。なおCRはクロム(Chromium)のCrをとったもので、本来クロム系ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒の銘柄となCM-9Cb、ステンレス耐熱鋼14