沼津市駿河湾に臨む伊豆半島の西側に位置し、静岡県東部エリアの玄関口となっております。古来より東海道の陸路と海路を繋ぐ要所として栄えており、2005年には「アジの干物」生産量日本一に選ばれるなど、水産業が盛んな都市でもあります。
今回その沼津市に鉄工所を構え、今年(2021年)10月にHグレードを取得された、株式会社影山鉄工所様を訪問し、影山社長にお話をお伺いしました。
本日はお忙しい中お時間を頂戴し誠にありがとうございます。まずは御社の歴史について教えてください。
当社は戦後間もない1947年に祖父が立ち上げた自動車の鈑金業がスタートです。小原自工というところで働いていたところ、「腕がいい」と認められ、やがて独立したそうです。当時は戦争孤児を含め養う必要があり、素材や道具も手に入らない中、孤軍奮闘し、沼津市内を何度か移りつつも、少しずつ工場を大きくしていったと聞いています。
2代目の父は、市内の建設業をされているところに修行に行き、そこで何年間か学び鉄骨業を始めました。やがてMグレードを取得しますが、その後にバブルがはじけ、浮き沈みが激しく大変だったとも聞いています。
バブル以降の建設業の方々のご苦労には伝えきれないものもあると思います。そのような歴史を辿られた、御社の「強み」とは何でしょうか?
製作物に関しては、ロボットシステムを多用している所です。初期の頃からコア連は使っていますし、今は大組立、石松 まですべてREGARC™を使用しています。その結果、生産量は大幅にアップしました。それまでは、半自動中心で溶接の箇所がボトルネックとなっていたため、以前は300~350t/月くらいの加工量でしたが、今では材料さえ揃えば700t/月、年間7,000~8,500tくらいは加工できるようになりました。
当社のシステムが生産量アップに寄与されていることはとても嬉しく思います。
後は「人」ですかね。全体の平均年齢は33歳ですが、製造側だけですと28歳となり、従業員が非常に若いのも強みの1つです。この事務所もそうですが、いろんなブランディング活動を行い、若い人財のリクルート活動に力を入れており、よくテレビなどでも取材をしていただくようになりました。
また設計をはじめ女性の登用も積極的に行い、雇用機会の均等化を図っています。今年は溶接士にも女性が入りました。受入元の高等学校に溶接体験などを提案し、学生の鉄骨製作への関心を高める活動を行っています。
また、コロナ禍によるところが大きいですが、テレワークを積極的に進めたことも大きいかと思います。今では週5日勤務のうち、週4日はテレワークとし、部署ごとに出勤曜日を振り分けています。コロナ禍が続く中において、BCPの観点からも事務所の人数を最小限に減らすことは重要だと考えています。現場ではどうしても人との接触は避けられないですが、マスクの着用を基本とし、各所の消毒も徹底して行っています。
また、従業員に安心感を与えるという観点では、例えば仮に陽性者が発生し自宅療養になったとしても、会社として補助する仕組みなどを示すことも大事だと思っています。
「IRON PLANET」について教えてください。
事務所の1階に設けた溶接体験施設ですが、一般のお客様にも公開しており、小学生の自由研究課題に活用いただいたり、飲食店の方が店舗の看板を作りに来られたり、いろいろな世代の方が来店くださいます。
また地域の「子供観光大使」の施設に認定されていて、今年はコロナ禍で開催できなかったのですが、社会科見学の応募を多数いただきました。他にも、県内のプロバスケットボールチームとのコラボレーションをしたり、溶接グランプリの会場として使用したり、多角的な活動を続けることで「溶接」というものを広く知ってもらおうと考えています。そういった広報的な部分とインターンシップを兼ね備えた形で今後も展開していく予定です。
とても素晴らしい活動だと思います。先ほどのお話に戻って恐縮なのですが、当社のロボットシステムを導入された経緯についてご紹介ください。
2018年頃まで鉄骨製作が年々右肩上がりで現場はフル稼働が続いていました。まだ導入する建屋はなかったのですが(笑)。ロボットシステムの納期が1年近くあったこともあり、先行発注しました。その後で第3工場、第5工場を立ち上げ、ロボット設備はすべて一番広い第5工場へ集約しました。
神戸製鋼所へのご要望についてございましたら教えてください。
まず半自動のJIS、AW技能講習の際には大変お世話になりました。溶接材料についてはスパッタの少ないものが望ましいと考えています。どうしてもスパッタ除去工程がボトルネックになるので。梁はFCWを使用することが多くなりましたが、単価面はやはりネックですね。
大組ロボットシステムについては納期を短くして欲しい、ですかね(笑)。でも一括償却ができる仕組みは良いと思います。
貴重なご意見ありがとうございます。今後の製品開発の参考にさせていただきます。最後に今後の展望について教えてください。
SDGsの取組みは最優先と考えています。HPにも取組内容を掲載しておりますが、第3者機関を用いて、より数値化したものを出していきたいと考えています。また、カーボンニュートラルについても、我々クラスの企業で目指すのは、「カーボンオフセット」の部分ですが、例えば不良率の低減や狭開先化による溶接量自体の削減などに取組むと同時に、それを数値化しお客様へのPRポイントとして売り込んでいく、というところまで考えています。環境省への働きかけなど大変な部分もありますが、向こう3年くらいにおいては先行した取組みとして評価いただけると考えており、当社の強みとして確立すべく目下力を入れています。
SDGsの未来に向けて独自で取組まれる姿勢は、同じ業界にいるものとして、とても刺激を受けました。本日は貴重なお話、誠にありがとうございました。
まるでカフェのような心地よい空間で従業員の方々はそれぞれ場所に捕らわれることなく業務をされていました。
取材を通じて溶接の未来、鉄骨製作の未来を真剣に考え取組まれていることに並々ならぬ決意を感じました。40代前半の若社長の目にはこれから10年、20年先の鉄骨業界の姿がはっきり見えているようでした。影山鉄工所様の社長以下従業員皆様の今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます。