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溶接ご法度集-8 各種溶接材料編(1) 被覆アーク溶接棒①


今回より溶接材料に関わる「ご法度」に入ります。第一弾は被覆アーク溶接棒(被覆棒)です。

ワイヤ化が進む日本では被覆棒の構成比は全溶接材料の一割程度です。しかし比較的簡易な設備で溶接ができること、風に比較的強いこと、溶着金属への信頼性の高さなどから、あらゆる産業で使用されている溶接材料です。

※本文中の溶接110番・119番および用語解説バックナンバーは、以下URLよりお入りください。
ぼうだより・技術がいどライブラリー http://www.boudayori-gijutsugaido.com/library/

ご法度(37)
被覆棒は一種類と思うのはご法度!

被覆棒は、心線(金属の棒)にフラックス(被覆剤)を塗布して製造されます。被覆剤は高温のアークで分解されシールドガスを発生させアークと溶融池を大気から保護する働きがあります。

被覆棒はJISで細かく分類されています。よく使用される軟鋼用のJISは右表のとおりですが、これらは被覆剤の種類によって分類されております。

被覆棒によって溶接金属の性能や使いやすさは大きく異なります。それぞれの特徴をよく理解したうえで選択してください。

日本では「ライムチタニヤ系」被覆棒(神戸製鋼では[F]Z-44)が、すみ肉溶接などでの使いやすさなどからもっとも多く使用されています。

JIS分類被覆のタイプ特徴神鋼銘柄
E4313 高酸化チタン系 スパッタが少なくビード外観が良好
重要構造物には使えない
[F] B-33
[F] RB-26 など
E4303 ライムチタニヤ系 日本でもっとも多く使われている
性能と作業性のバランスが良い
X線性能は劣る
[F] Z-44
[F] TB-24など
E4319 イルミナイト系 重要構造物にも使用可能
性能と作業性のバランスが良く、X線性能も良好
[F] B-10
[F] B-14
[F] B-17
E4316 低水素系 性能重視で割れにくい
X線性能良好
溶接には熟練が必要
[F] LB-26
[F] LB-47など

*JIS Z 3211の詳細は神鋼総合カタログP398~をご参照ください。


ご法度(38)
高酸化チタン系被覆棒で
重要構造物を溶接するのはご法度!

「作業性=使いやすさ」と「溶接性=溶接金属の健全性・機械性能」は反比例!

JIS Z 3311でE4313に分類されている「高酸化チタン系被覆棒」は、適用箇所に注意が必要です。

このタイプは極めて使い勝手がよく、スパッタが少ない、ビード外観も美しいなどの特長があります。しかしX線性能が悪く、機械的性質(特に吸収エネルギー)も良くありません。したがって、重要構造物への適用はご法度となります。


ご法度(39)
板厚20mm以上の厚板をイルミナイト系被覆棒で溶接するのはご法度!

イルミナイト系被覆棒(Z 3211 E4301)は、作業性と溶接性を兼ね備えた被覆棒で、広く重要構造物に適用されています。

一方、母材の板厚が厚くなると溶接の際の冷却速度が速くなり、また拘束力も大きくなります。

このような厚板をイルミナイト系被覆棒で溶接すると、低水素系被覆棒と比較して拡散性水素量、耐割れ性、吸収エネルギーなどの点で限度があります。厚板へのイルミナイト系被覆棒の適用は特別な場合を除き20mm程度を限度と考えたほうが良いでしょう。


ご法度(40)
同じ棒径の被覆棒でさまざまな板厚を溶接するのはご法度!

被覆棒の径(心線径)は、神鋼溶接総合カタログを見ると1.6mmから8.0mmまであります。この使い分けは、突合せ溶接では板厚と溶接姿勢および開先形状によって決めます。また水平すみ肉溶接であれば、設計上図面で指示された脚長によって決めます。
 適正な棒径の選択ポイントは、所定の品質が得られるなかで最大棒径を使用して能率を上げることです。

水平すみ肉溶接の被覆棒の選び方(一例)
特に優れている点
板厚
(mm)
銘柄 棒径
(mmφ)
使いやすさ 強さ
ビード外観 スパッタ 溶込み 耐割れ性
1.6 ~ 2.4 [F] B-33
[F] Z-44
[F] B-10
2.6


 

2.6 ~ 3.2 [F] B-33
[F] Z-44
[F] B-10
3.2


 

4.5 [F] B-33
[F] Z-44
[F] B-10
4.0


 


突合せ溶接の被覆棒の選び方(一例)(下向溶接-Y開先/片側)
特に優れている点
板厚
(mm)
銘柄 棒径
(mmφ)
使いやすさ 強さ
ビード外観 スパッタ スラグはく離 溶込み 耐割れ性 耐ピット性
3.2 [F] B-33
[F] Z-44
[F] B-10
3.2



 

 

4.5 [F] B-33
[F] Z-44
[F] B-10
4.0



 

 


ご法度(41)
低水素系被覆棒の箱をあけてすぐに使うのはご法度!

本号の技術レポートでも脱気包装による再乾燥不要棒(開封直後の再乾燥省略が可能)を紹介しています。

被覆棒の中でも、低水素系被覆棒はとくに湿気をきらう被覆棒です。

被覆棒は、箱に入った状態でも吸湿します。そこで開封したらまず所定の条件で乾燥することをお勧めします。

通常、5kgの紙箱包装はビニールに覆われていますが、これは水濡れ防止のためでこの状態でも吸湿は進みます。使用前の乾燥は欠かせません。

銘柄ごとの乾燥条件(乾燥温度および時間)は神鋼溶接総合カタログP536にてご確認ください。


※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
FAMILIARC™→[F]
(株)神戸製鋼所 溶接事業部門 マーケティングセンター
マーケティング企画室 原田 和幸

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